或る作家の一室
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或る作家の一室
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#雨月ものがたり #声劇 #声劇台本 #二人声劇 #予告風声劇 #コラボ用
◆:ずっとぬるま湯に浸っている。
善悪の判断も自他の境界も全てが曖昧な生活で
己を繋ぎ止める唯一が、この電話だった。
╱以下、0:15までのト書。(考慮せず演じても良し)
[◆─子機が鳴り目を覚まし、廊下を歩いてリビングの親機の元へ向かっている。]
[◆─覚束無い足取り、欠伸。]
[◆─親機の受話器を取り上げる。]
[ポップアップが表示され、◇の顔がスクリーンに浮かび上がる]
◆:「……、…ぁい。おはようござぃあす」
[BGM─in]
◇:「おはよう! さて、今日もいい日かな?」
◆:「朝からうるさいです」
◇:「毎日毎日本っ当に可愛げがないな君は!」
◆:「必要ないんで」
◇:「私はね、バターをたっぷり塗ったトーストとコーヒーで朝食を済ませ朝刊を読みエルガーの愛の挨拶を弾いて二十分程の散歩までした上でこうして君に電話をかけている訳だけれど! それに比べてどうだい君は!えェ?」
[◆─適当な相槌(「へえ」「ふうん」等)を打ちつつ、薬瓶から二錠取り出し服用まで。次いで片手間に朝食を頬張ったりなどすると尚良し。]
◇:「……聞いてるのかい?」
◆:「聞いてます聞いてます、ニワトリがうずらの卵を産んだって?わおそりゃすごい」
◇:「君ねェ……嫌ったらしい電子の渦に呑まれて生活しているからそんな、」
◆:「あーはいはい、小言は良いですから」
◇:「むぅ……さて、と。それでは今日も執筆を頼むよ」
◆:「はい。今日は〝胡蝶の盃と栞〟の章です」
◇:「服薬は?」
◆:「終えました」
◇:「宜しい。それではね」
◆:「ええ、また夜に。見守っていてくださいね、マザア」
◇:「任せたまえ。愛しの作家様」
[受話器を置く。]
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