【声劇】マガイモノ【台本】
分岐路のその先のお話。
【声劇】マガイモノ【台本】
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河原に佇む、そのマガイモノの後ろ背は実に空虚なものであった。
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『本物への冒涜だ。
日々を徒に浪費するだけの偽物のお前は
何をするにしても、マガイモノだ。』と。
僕は不思議と納得を覚えたのだ。
常人であれば深く心に傷を負うであろう
この言葉に。
だが優しすぎたのである。
齢四十にして
惑い、
憂い、
嘆くばかりで
妻子もおらず、
唯一にして最大の友人を先刻失った
この愚図の身には。
齢三十の頃、
自分は何物にもなれないと見切りをつけ、
何者かになる努力を怠った。
そうして今、僕は半身を引き摺って生きている。
だが、悠然と伸びゆく夕焼け雲は風と共に心を攫っていく。
数日、数週間、数ヶ月、数年。
そうすれば、失った友人の顔すら虫食いの餌食だ。
分かるかい。分岐路に立つ諸君。
これこそ、僕がマガイモノである所以なのだ。
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吾十五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳従う、七十にして心の欲する所に従いて矩を踰えず。
私は十五で学問に志し、三十になって独立した立場を持ち、四十になってあれこれと迷わず、五十になって天命を弁え、六十になって人の言葉が素直に聞かれ、七十になると思うままに振舞っても道を外れないようになった。
(孔子「論語」より引用)
僕を形容する言葉など探せばいくらでもあるだろう。
愚図、うだつの上がらぬ中年、異端者、瓦落多
そして、マガイモノ。
マガイモノには、大きな意味があるのだ。
僕を形容する上で最も相応しい、
最早僕はこの言葉を愛おしくすら感じる。
マガイモノには「限りなく本物に見せ掛けた、決定的になにかが足りないもの」という意味がある。
あぁ、実に僕らしい。
僕の風体は普通であろう、とその自信はあるのだ。中肉中背、太いわけでも細いわけでもない。だが風体なぞ、初対面の者以外にはどうでも良いのだ。ひとたび関係を結んでしまえば、僕の『異常』は、火を見るより明らかなのである。
僕の正体は、人間の皮を被った怪物か、狂気に侵された人間か。
はたして。
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こちら、内容、その下のキャプションに至るまでマガイモノは男性という形で書いておりますが、あくまで私のマガイモノは男性であっただけのことです。演者の皆様方の思う性別のマガイモノを演じて頂くことがなによりでございます。
つきましては、この台本では性別転換、それに伴う台本の一部改変などは了解させていただきます。その他ご質問はコメントにして頂けると幸いです。
それでは、あなたのマガイモノを心より
お待ちしております。
編集:そーま
お借りした曲:「真実」(チョコミント様)
お借りしたSE:効果音ラボより多数
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コメント
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- 異灯音乃子お借りします( . .)"
- 酉頭ねこた 次回投稿未定お借りしました!
- 二条 朔これは…読むしかないよ!久しぶりにそーまくんの台本読めるの嬉しい✨