3. *Solo song for Yukina*
《ルビーのおもてなし》
緊張の面持ちで案内された席に座る。
アンティーク調の家具に囲まれたこの部屋は広々としていて、ここには私と双子のビスクドールの片割れ──陽花しかいない。
雪菜さんは「準備してくる」と言ったきり屋敷の奥に行ってしまったし、陽花さんも紅茶の準備をするからと棚から道具を出して作業をし始めてしまった。
話しかけられるわけもなく、緊張感に包まれながら私は無言で待つことにするのだった。
「お待たせ」
どのくらい時間が経ったのかわからないが、不意に扉が開き雪菜さんがお盆を持って現れた。目の前に陶器に入った何かが置かれる。
それはキラキラとしていて、小さな宝石の形をしていた。グミよりは大きいけれど艶があり、マシュマロより一回りくらい小さい大きさだ。
初めて目にしたそれをまじまじと見つめていると、雪菜さんが『コハクトウ』だと教えてくれた。
何だかすぐに食べるのが勿体なくて香りを確かめていると雪菜さんが口を開く。
「早く食べないと溶けちゃう、かも……」
「えっ、溶ける……?アイス…?」
気になって思わず顔を上げるとルビーの瞳と目が合い、口元がほんの少し弧を描く。
「……冗談」
もう、お客さんがびっくりするでしょ、なんてアクアマリンの彼女からの突っ込みが入るとルビーの彼女の表情が微かに緩んだ。
どうやら和ませるための彼女なりの気遣いらしい。見かけによらずお茶目な一面があるのかもしれない。
気づけば緊張も和らいでお腹が空いてきた気がする。
「召し上がれ」
雪菜さんに促されるままに私は水色の琥珀糖を一つ手に取り、一口噛った。
それは一見、キャンディーのように硬そうな容貌をしているのに外側はシャリシャリとしていて、中はゼリーの硬さにも似たような不思議な食感がした。じんわりと甘さが口に広がる。
初めて出会った琥珀糖。
それはまるで彼女みたいだと私はぼんやり思った。
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◇Lyric
心にいつしか咲いた結晶
小さなジオードみたい
誰かを想うと育っていく
このまま満ちれば 見つかってしまう
だけど 嘘つきにはなりきれない
本当は一番に君に見つけてほしい
言葉以上に その美しさは 細やかな太陽の光のように
色めく日々を優しく湛えてくれる
きっと宝石は こうして生まれてる
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◇sound source
花咲蝶也 様
https://youtu.be/z2_7G00Fv0Y
◇illustration
のどあめ
◇Mix・Edit
スノーク
◇cast
❄️雪菜(cv.スノーク)
#Claire2周年 #Secret_tea_time
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