ちゃんと笑えなきゃね 大切が壊れちゃうから
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ずっと、お姉ちゃんの背中を見て、歩いてきた。
いつも笑顔で、明るくて、誰かのことを思いやってて。臆病で、暗くて、気付いたら自分のことばかり考えている私とは正反対だったから、一緒に歩くときは無意識に後ろに隠れてしまっていた。でもお姉ちゃんは隠れて歩く私に気が付くと、片方の手を繋いでくれて、隣で歩こうと言ってくれた。ずっと隣で歩きたかった。けれど、追いつけたことなんて一度もなかった。
何も追いついていないのに、ずっとその後ろ姿を見上げたままでいたかったのに、いつの間にか目線だけは同じくらいになってしまった。そのことに気付いたお姉ちゃんは少しびっくりして、どこからか定規のようなものを持ってきて背の高さの差を測り始めた。神妙な顔つきで定規を見つめていたと思ったら、すぐにほっとしたような表情に変わった。
「ふーちゃんの方がちょっとだけ高い!よかった〜、お姉ちゃんの方が小さいのってかっこ悪いもんね!」
「全然かっこ悪くなんかないよ。私なんか、お姉ちゃんみたいなすごいところ、ひとつもない」
最後の方は自分でも聞こえないくらい小さな声で呟いたつもりだったけど、ちゃんと聞かれてしまっていたらしく、お姉ちゃんは驚いていた。
「え!?そんなこと絶対ないよ!いつも優しいし、一緒にいると安心するし、笑うとかわいいし!風鈴がいるだけで、ふーちゃんめちゃくちゃ幸せだもん!風鈴が自分のすごいところ見つけられなくても、ほんとはこんなにいーっぱいあるって、ふーちゃんにはとっくにわかってるよ!」
その言葉にすごく嬉しくなってしまって、お姉ちゃんが言うなら、私にも本当にあるんじゃないかって、そんな気がした。
でも、そんなことなかった。
なんでダメな私が生きてしまっているのだろう。どうして何もできなかったのだろう。突然全てをなくしてしまって、なんにも考えられなくて、なんで、どうして、が頭の中をぐるぐるするばかりで、信じられなくて、認めたくなくて。時間だけが独り歩きをし続けていて、一人でいることもだんだん怖くなってしまった。
そんな時、数年前に引っ越した疎雪ちゃんのことを思い出した。心の中では疎雪ちゃんのためだって言い訳していたけれど、本当は私が寂しかっただけ。疎雪ちゃんを笑顔にしたいんじゃなくて、疎雪ちゃんの笑顔を見て私が勝手に安心したかっただけ。だけどそんな考えはすぐに私に否定された。私はお姉ちゃんじゃないから。疎雪ちゃんを笑顔にしていたのはいつもお姉ちゃんだけだったから。私は何もせずに、ただ見ているだけだったから。
でも、鏡の前をふと通りかかった時。そこに映っていたのは泣きすぎてぐしゃぐしゃになったひどい顔だった。けれどなぜだか、お姉ちゃんの面影をそこに感じた。少し長く伸びていた髪を肩の上くらいで切り揃えて、腫れた目を冷やして、口角を上げてみた。
お姉ちゃんに似ているところなんて、私にはひとつもないと思っていた。けれど、姿だけはそっくりだったみたい。鏡には、扉を開けて帰ってくるはずだったお姉ちゃんの姿が映っていた。
これで大丈夫だと思った。私も、疎雪ちゃんも、きっと。
なのに、どうして上手くいかないのだろう。私が一生懸命笑ってみせても、疎雪ちゃんは不安な顔をしてしまう。かえって心配をかけさせてしまうだけだった。お姉ちゃんみたいにずっと笑顔でいたら、疎雪ちゃんも笑顔になってくれると思っていた。
どうしてなのかな。
やっぱり、私がお姉ちゃんじゃないから?
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lyrics
例えば今夜眠って 目覚めたときに
起きる理由が ひとつも 見つからない
朝が来たら わたしは どうする?
うるさく鳴いた 文字盤を見てた
一歩一歩あとずさり 「また明日ね」とぽつり
喜びより 安堵が先に来ちゃった
思い出西日越し うつるこまかなヒビが
こんなにも恐ろしい
ああ あなたが知ってしまう
ああ 取り繕っていたいな
ちゃんと笑えなきゃね 大切が壊れちゃうから
幸せな明日を願うけど 底なしの孤独をどうしよう
もう うめき声しか出ない
わたし ぎゅうぐらりん
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Cast
🌻風鈴 -Furi- cv.ハナムラ
Instrument
→ https://piapro.jp/t/avSj
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