「蒼の探索」(ハスタ)
秘密結社 路地裏珈琲
「蒼の探索」(ハスタ)
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ハスちゃんが持って帰ってきた、“テル“の名前が書かれたスノードーム。私は無言でそれを受け取って、水色にくすんだ誕生日の景色を思い出した。
私は、水底、水色の街に生まれた。
そう、18歳の誕生日、父と母に貰ったそのスノードームと、少ない荷物を鞄に詰めて、私は故郷の海を発った。
18歳になればこの歌を教わり、一人前の大人と認められて、私たちは大事な役目を仰せつかるのだ。そう、陸への道を切り開き、私たちに眩く新しい運命をプレゼントしてくれた王妃様が眠る、“蒼”の墓守の当番となる。
どうやってこの足を鰭に戻したり、人の姿になればいいかは思い出せない。ただ、あの頃の私は波を捕まえ踊って回り、海底都市の門番として、幸せに暮らす人形の群れを世話しながら、冒険の毎日を送っていた。
ヨウが降りてきた日も、なんでもない日も、全部全部、命ある毎日が贈り物だった。
私は、間違いなく、私の海で1番幸せな人魚だった。
はずだった。
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“水色のスノードーム”を手に入れました。
にわかに信じがたい記憶だけど、テルちゃんは人魚だった。
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