一人声劇*快晴 〜太陽と雨〜
朗読者(悠梨)
一人声劇*快晴 〜太陽と雨〜
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「やっとつかまえた」
そう言って私の手を掴むのは、ずっと忘れたかった、太陽みたいに笑う貴方だった。
たくさんのことから逃げてきた人生だった。
楽しいことも、
嬉しいことも、
幸せなことも。
いつか無くなってしまうことに気がついてからは、そんなことからも逃げてしまっていた。
逃げることだけはどんどん上手くなっていった。
そのくせ逃げられることにはめっぽう弱くて、失うことが怖くて仕方がない。
だから、そんなことは最初からいらなかった。
無い方がマシだ。
無くなってしまうより、無かった方が、よっぽどマシだ。
それでいい。
それがいい。
貴方に出会う前は、そう思っていたのに。
貴方のあの笑顔だけはどうも忘れそうになかった。
どうしてそんなにも単純で、馬鹿みたいに笑っているの。
何がつかまえた、なのよ。
いいよ、いいの。
放っておいていいよ。
私のことなんて、無かったことにしちゃっていいのに。
そんな顔されたら、私。
もう、逃げられないよ。
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