破滅の純情
ワルキューレ マクロスΔ
破滅の純情
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MISSION:03『再会』
song💘破滅の純情
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「万莉さんまた直帰?」
「うん、そうみたい」
「もー、今日こそはあの身のこなし、教えてもらおうと思ってたのに!」
ここは銀河探索部隊本部。六十階の高層ビルからなる建物だ。その四十階に位置するラウンジで、『歌乙女』の楼とまゆるは束の間の休息をとっていた。戦闘時でも崩れない、完璧にセットされたツインテールを揺らしながら、楼はつまらなそうに頬杖をつく。
「あの人にしても、こよみさんにしても、なーんかよく分かんないのよね。昔何かあったのかしら」
「さぁ。話してくれないってことは、話したくないってことでしょ。変な詮索は良くない」
事も無げにそう言うまゆるは、いつも冷静沈着だ。けれど、共に万莉の傍にいる者として、楼はまゆるが少なからず万莉を心配していることを知っていた。
「素直じゃないわね」
「? 何か言った?」
「別に」
「そう。……ねぇ、楼ちゃんは、何でずっと万莉さんについて回ってるの?」
不意打ちで飛んできた質問に、楼は一瞬目を丸くしてから少し気まずそうに顔を逸らした。
「先にあんたから言いなさいよ」
「まゆるは、強くなりたいから。働き手にならないからって、家から追い出した家族に後悔させてやるために。だから一番強い万莉さんの近くで学びたいと思ってる」
まゆるは淡々とした口調で怯むことなくそう言ってのけた。あまり率先して身の上話をする子では無かったから、てっきりはぐらかされると思ったのに、と、楼は予想外の返答を聞き一瞬言葉に詰まった。しかし、相手の事情を聞き出したからにはこちらも言わねばならない。あまり気は進まなかったが、楼は渋々口を開いた。
「レイに、菫沢 礼美に似てるからよ」
「それって、二年前に失踪した……」
「そう。元銀河探索部隊の隊長。私の友達で、憧れだった人。万莉さん見てるとね、何だか思い出しちゃうのよ」
楼は寂しそうに口を閉じると、椅子から立ち上がって窓辺に歩いていった。窓の外には、見渡す限り鮮やかな星空が広がっている。一つ一つが砂粒のように小さく見える、あの星々のどこかに、彼女は居るのだろうか。
「私、あの子と一緒に戦いたくて『歌乙女』を目ざしていたのに。今はどこで何をしているのかしらね」
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探索部隊の本部と、王家が暮らす城を結ぶ長い廊下を、都と月音は緊張した面持ちで歩いていた。今日は第一王女美鈴様へひと月の成果を報告に行く日。そして、第二王女の捜索報告をする日。
「今月も何の進展も無かったと言えば、美鈴様は悲しむかしら」
「だろうな。はぁ、今から気が重いぜ。……愛鈴、一体どこに行っちまったんだろうな」
その言葉を最後に、二人は揃って押し黙る。王室の直轄地である城下町で生まれた都と月音は、お忍びでよく町へ降りていた第二王女とは親しい間柄にあった。町にいる間だけでも、王女という肩書きを忘れ自由でいたいと言った彼女は、二人の目には明るく快活な普通の少女として映っていた。あの日も、姿を消す直前まで、いつもと変わらぬ笑顔だったのに。
彼女の仕草を鮮明に思い出してしまった都は、長い廊下の真ん中で思わず立ち止まった。月音が心配そうに振り向くが、彼女は再び歩き出すことは無く、ただ透明なガラスの向こうに目をやって、きらきらとチラつく星を眺めていた。と、その時だった。
ガラスの壁を隔てたその向こう、遠い空を横切るようにして、三つの人影が現れた。まるで『歌乙女』のような姿をした人影は、そのまま都の視界を横断してゆく。刹那、ビルの明かりが反射して、人影を照らし出した。光の中に浮かび上がった人物が誰なのか分かった途端、都は咄嗟に声を上げた。
「愛鈴ちゃん……!」
声はガラスに共鳴して、明かりに照らされた少女の元まで届いた。しかし、記憶の中と同じ風貌のその少女は、一瞬驚いたように都の方を向いただけで、直ぐに視線を逸らし闇夜の中に隠れてしまった。
「生きていた、愛鈴ちゃんが、生きてたわ……」
そう呟いた都は、我に返ると慌てて無線機を取り出し、こよみの元へと繋いだのだった。
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「まさか、バレちゃうとはね」
「……ごめんなさい」
しゅん、と肩を落とした愛鈴に向かって、千春は笑って首を振る。
「気にしないで。あそこのセキュリティは凄いから、多分遅かれ早かれ誰かに見つかっていたと思う。だから本当は通りたくなかったんだけど、この星は銀河の中心だからね。何処へ行くにも避けては通れない」
千春は厳かにそう口にすると、一歩引いたところでタブレット型の端末を操作している礼美に話しかけた。
「君も、悪役になる覚悟は出来てるよね」
「勿論。そうで無ければ、こんな所まで来ませんよ」
礼美は静かに微笑んで端末を閉じると、高層ビルから飛び出してきた六つの光をじっと見つめる。
「争いからは逃げられない」
光は徐々に大きくなり、人の形を取っていく。そうして現れた少女達に向かって、千春は笑顔と苦しみが混ざりあったような顔を向けた。
「久しぶりだね、皆」
ウイルスの出現時と同じ紫色の靄をまとった彼女は、その場に立ち尽くす少女達を静かに見下ろしていた。感動的な再会とは程遠い、嵐の前の静けさが辺りに満ちていた。
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👒櫛引 まゆる(CV:日向ひなの)
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🌺緋杓 楼(CV: らいち)
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❄️雪ノ瀬 万莉(CV:桐生りな)
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❄️燃え上がる瓦礫の上に立っている
いつからか 何故なのか 忘れたけど
👒息継ぎも出来ない炎の中では
🌺探しても 見つけても 意味がないよ
❄️👒壊せ ❄️🌺超えろ
❄️過去のエクスタシー
たとえ最悪でも 未来を選べ
👒🌺「行・く・よ」
💘ギリギリまで Love Forever
悶えるほど 歌えば
❄️魂は 蜷局(とぐろ)を巻き yeah
💘それでもまだ 叫べば
生きることに 滾(たぎ)れば
❄️その先は 破滅の純情!
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イラスト:千咲町地域支援課職員 常磐 光紀
#らびぷろ #千咲町観光課 #Angel_tune
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