Ⅸ:ノーチラス
ヨルシカ
Ⅸ:ノーチラス
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Ⅸ:ノーチラス
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🕊時計が鳴ったからやっと眼を覚ました
昨日の風邪がちょっと嘘みたいだ
出かけようにも、あぁ、予報が雨模様だ
どうせ出ないのは夜が明けないから
⚙️喉が渇くとか、心が痛いとか、人間の全部が邪魔してるんだよ
⚙️🕊さよならの速さで顔を上げて
🕊いつかやっと夜が明けたら
もう目を覚まして。見て。
寝ぼけまなこの君を
⚙️何度だって描いているから
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「そうだ、私は、人形で子どもたちを作り出したんだ」
グリースの半生を照らし終えると、光は何事も無かったかのように波引いていった。彼は、憔悴しきった瞳で、動かないマリーに近寄った。
「一番上のお兄ちゃんはアルザス、のんびり屋の次男はロレーヌ、末っ子の妹姫はマリー。アンジュは、何度もそう呟いていた」
いつの間にか、元の人形の姿になってしまったマリーをそっと持ち上げると、グリースは悲しそうに微笑んで二人の我が子を見つめた。
「お前たちの、名前だよ」
二人が何かを言いかけるその前に、グリースはフッと視線を逸らした。それはまるで、話しかけるなと言っているようにも見えた。
「初めてお前たちが動いた時、私は、奇跡が起きたのだと思った。子どもたちの命が、人形に吹き込まれたのだと、そう思った」
グリースは、マリーについた土埃を丁寧にはらいながら続ける。
「けれど、お前たちは私の事を、父ではなく主であると言った。夢から醒めたような気分だったよ。この子達は、私の子ども達では無い。私が作り出した虚構に過ぎないと、思い知らされた。……そうしたら段々と、お前たちの存在を憎らしく思うようになってしまったんだ。だから私は、お前たちに全く異なる性を与え、他人の元へ讓渡することにした」
単調に述べたグリースは、そこで言葉を切ると、フリュイとヴァロワを見つめた。先程の彼女達の言葉は、かつての自分が人形達に向けたかった言葉だったのかもしれないと、遠い記憶の片隅で思う。
「……大切な存在に、出会えたんだな」
そう言って目を細めると、グリースはそっとマリーの頭を撫でた。
「この子には可哀想な事をした。面差しが、アンジュに良く似ている子だった。……もし、昔に戻れるのなら」
「……」
ロレーヌとアルザスは、父である男を見つめ、何かを思案するように俯いていた。グリースの過去を伝えられても尚、ロレーヌやアルザスが人間としての記憶を思い出すことは無い。彼が言ったように、ロレーヌ達は彼の子ども達では無いからだ。産まれてくるはずだった三つ子に寄せられた、ただの人形に過ぎなかった。
でも、それでも、自らが心を持って生まれてきた意味は、ここにあったのではないかと、そう思わずにはいられなかった。
「フリュイ、ごめん。僕……」
「ロレーヌ、あなたを使って【願い】を叶える」
振り返ったロレーヌの言葉は、フリュイの声に掻き消された。二人は目を合わせ、それから可笑しそうに吹き出した。
「考えてる事は同じだね」
「そうね。あの人の為に、良いかしら」
「僕はそうしたいと思った。……でも、フリュイには叶えたい【願い】は無いの?」
フリュイが自分の願いを押し殺してまでグリースを救おうと考えているのなら、ロレーヌはそれを止めようと思っていた。しかし、恐る恐る問いかけたロレーヌに向かって、フリュイはさっぱりとした笑顔で首を振る。
「良いの。わたしも、そうしたいと思ったの。ロレーヌ達を作ったのも、わたしたちを出逢わせてくれたのも、あの人だから。それにね、」
「あなたと出逢った時に、きっともう、私の【願い】は叶っていたのよ」
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⚙️グリース(CV:桐生りな)
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🕊アンジュ(CV:えりざ)
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🎨菜音葉
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第2部
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#Yes_my_D
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