Happy white day✨(アヤ)
秘密結社 路地裏珈琲
Happy white day✨(アヤ)
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「いっちゃん、こんな時間に何食べてんの」
「......ダイエット中のはなちゃんには悪いけど、今この時、世界で一番美味しい食べものだよ」
「いっちゃん小生にも」
「マメちゃんには明日、別のをあげるね」
私が伸ばした短い指が、イチロウの長い指で優しく絡め取られて追い返された。
カロリーが取れればなんでもいいと思っていた彼、イチロウが、腹にも溜まらぬものを夜中にわざわざ広げ、ショコラはいいねだなんて、口をモゴモゴ小さな粒を摘んでいる。
サトウがなみなみと淹れていった珈琲は、彼のオーダー通り、とびきり苦くてセピア色が香る深煎りで、普段甘いものを食べつけない口には良く馴染むだろうと思った。
珈琲屋のカウンターで食べたケーキも、いつか飲んだフラペチーノも、彼はただ会話のきっかけ作りに摂ったと切り捨てていたが、本当は多分怖かったのだ。
その甘さを共有して、一度溺れてしまったら、距離が縮まってしまったら......やっと血の味に慣れた彼の舌が人の心を取り戻して、標的を撃てなくなってしまう。
けどもう、その心配はお払い箱であろう。長年付き合ってきた我々だ、その顔を見ればわかる。アヤのショコラが、彼をとっぷりと甘党に躾けてしまった。
「次は、もう少し、軽い珈琲でも合いそうだなぁ」
大事に取ってあるそのリボンの隣で、明日の朝届けられるのを待つ、お日様色の大きな猫のクッキーが、ゴロンと二匹寝そべっていた。
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にゃんすけときなこにそっくりの、デコクッキーを探してきたんだって。
ハッピーホワイトデー!
イチxアヤ
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