キリエに居る理由
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キリエに居る理由
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「…という訳なの!後はよろしくね!!フフゥ」
「ちょっと!ちぇりちゃん、そんな…!!」
幸せに揺れる栗色のしっぽが代わりに手を振った。レオのプロポーズの手伝い…確かに皆が彼に話をしたり、手助けをしているのは何となく知っていた。自分は何もしなくていいのかな?何が出来ないかな…とは思っていたが、こんな形で急に話が振られるとは思っていなかった。出張所に現れたちぇりが、レオのプロポーズにバッチリな場所を教えてやってくれと依頼してきた。確かに仕事上、街の事はよく知ってはいるが、プロポーズだなんて…
「わ、私だって…した事もされた事もないのに」
切ない顔でボヤく。憧れの先輩からプロポーズされたら…頭を掠めたが、大きな溜め息で押し流した。
後日、ちぇりの指示の元レオは出張所に現れた。
「失礼します。ああ、素敵ですね…キリエらしい理事会事務所だ。素朴で落ち着く建物ですね」
そういえば彼も元理事会員だ。つまりシノの先輩である。砂漠の街の出張所はどんな建物なんですか?2人は他愛もない話で盛り上がった。成程、さとらさんが彼を好きになった気持ちがわかる気がした。異国特有の少し派手な容姿だが、話しているととても穏やかで静かに寄り添うような彼の人柄は共に居て安心出来る。美男美女カップルか…いいなぁ。シノはうっかり溜息をついた。
「どうなされました?シノさん」
え?!なんでもありません!シノは真っ赤になって顔をふった。
2人は外に出て歩き出した。…しかし、告白する場所なんて…シノの眉間にシワが寄った。取り敢えず手当り次第紹介していく。教会、広場、世界樹に続く森、素敵なカフェ…どこもロマンティックで、なんだか2人でデートしてるみたい。心做しかときめく胸。
「ふふ、流石シノさんですね。本当に素晴らしい場所をご存知だ。理事会員だから、街の事をよく知っているんですね」
「仕事もありますけど…好きなんです!この街が。皆さん良い人で、温かくて。地味なところですが、私の2番目の故郷だって思ってます」
好き…かぁ。レオは目を細めて青空を仰いだ。美しい青空が続いている。
「好きだって気持ちがなかったら…僕は…ここに戻ったろうか?先生に呪詛を習って…街を豊かにした。夢を叶えたんです。幼い時からずっと願った夢。もうゴールしてしまった物語。僕は…」
「それでも今、キリエに居ます。誰の、何の為に…ですか?」
「……愚問でしたね…。やめてください、僕だって照れる事はあるんですから」
じっと見つめるシノの顔の前にレオは手をかざして恥ずかしそうに顔を逸らした。
2人は出張所に戻った。さて、肝心の告白の場所だがまだ決まらなかった。ああでもない、こうでもない…と話し合う。けれど何処も決定打に欠けた。うーん…唸り声が上がり始めた頃、チラシを抱えたニフが忙しそうに2階から降りてきた。
「あ、おかえりなさい。街の案内ですか?」
「お邪魔しています、ニフさん…何か入り用ですか?すごい荷物だ。お手伝いしましょうか」
レオがニフの抱えたチラシを受け取る。見るとそれはキリエに一つだけある大劇場のものだった。
「あ!今年も獣人の楽団さんがキリエに来て下さるんですね!?私1度だけアヴァロンで見たんですが…キリエでも聞けるなんて楽しみです!」
シノは嬉しそうに声を上げた。毎年オーケストラコンサートを行ってくれる楽団だ。来れない年もあるが、今年は無事に開催される事となった。
「そうなんですが…。いつも私が司会するのですが、緊張して噛みまくるので…私は荷が重いです…はぁ」
「…なら、僕が変わりましょうか?理事会で働いていたので、似たような事はしてきましたし」
2人の顔がレオを向く。ニフは叫び出しそうな表情だ。では早速!と司会進行の手順を話し出すニフの隣で、シノはハッとした顔をした。
「レオさん!大劇場!オーケストラコンサートにさとらさんを招待しましょう!レオさんが司会をして、コンサートで皆が幸せになっている雰囲気ならきっとさとらさんも喜んでくれますよ!」
ええ!?とレオから声が漏れる。全く話に着いていけないニフはキョトンとした。シノはバドン島での経緯を説明する。
「え!ああ!成程です!…え!?本当ですか!!わあ!そんなおめでたい話が…あらららら」
急な話に興奮するニフだったが、改めてシノの意見に賛同し、レオに勧めた。
「うっ…ま、まぁ…確かにいいとは思います。けど…司会の立場を利用して皆さんが演奏を聴きに来てる中告白なんて出来ません。やり方は…僕が考えていいですか?キリエの皆さんがアドバイスしてくれたことを胸に…」
シノとニフは幸せそうに顔を合わせた。2人は早速さとらへコンサートの招待状を制作した。
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プロポーズ大作戦の参加有難うございます。
NPCへクエストが発令されました。
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