【1人声劇】僕が知っているその人の全て
語り手 :光
【1人声劇】僕が知っているその人の全て
- 12
- 4
- 1
その時間、その席に座るその人は、
特に決まってこれといった物を注文する訳ではないが、しかし最初は必ず、コーヒーを飲んでいた。
この20数年、人に興味を抱いたことなどなかった僕が、無意識に見てしまうほどに。窓の外を眺め、物思いにふけるその人には、何とも形容しがたい魅力があった。
その日。その人の帰り際。らしくもなく僕は、何かに取り憑かれたかのように話しかけてしまっていた。
今思えば、コーヒーは何がお好きなんですか、とか、
この辺りに住んでいるんですか、とか、
そういう事を聞くべきだったのだろう。
「いつも、1人で何を考えているんですか」
少し驚いたような表情をした後に、その人はゆっくりと口を開いた。
『窓ぎわの花瓶の花たち…。季節によって変えているんですね。…見るのが、とても好きでした。』
それから季節は巡り、幾度も花を変えたが、それ以来、その人が来ることはなかった。
なんかピーっていってる!!
コメント
1件
- PICO素敵な男性店員さん。 どこか影あるような。未練があるような…、 凄くお上手な語りと、低くそしてカッコイイお声。 話しかけてしまった店員の演技が素晴らしかったです。 拙い台本にも関わらず、読んで頂きありがとうございました!!🙇♂️