【声劇台本】未練の置き所【お題メーカー】
台本:ばね 読んだ人:
【声劇台本】未練の置き所【お題メーカー】
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お題メーカーで出たお題に即興で答える試み。
◆お題◆
「幸せになってください」という台詞で始まり「また会えますようにと願うほかないのだ」で終わります。
#こんなお話いかがですか
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「幸せになってください」
泉に映った人影に向かって、その人はそう呟いた。
悲しげで、諦めた様でありながら、しかしどこかほっとした様な表情で。
この泉に何が映っているのかは、覗き込んだ本人にしかわからない。
大抵の人間は、恋人やら家族やらの姿を見て泣き崩れるか
憎い相手の姿を見て罵詈雑言の限りを尽くすか…。
どちらにせよ、そうやって吐き出すことで未練をここに置いて
次の人生を歩んでいくことができるのだ。
しかし、その人は最初の一言っきり、それ以上何も言おうとしなかった。
「いいんですか?ここで捨てておかないと、もう行き場はないですよ」
「えぇ、色々ありはしますけど…それは、直接伝えるべきことですから」
お節介とは思いつつ、声をかけてしまった私に、その人は軽く微笑んで踵を返した。
お節介ついでに、私はその背にもう一言かけずにはいられなかった。
「また会うことなんて、できないかもしれませんよ」
「そうでしょうね。でも、それで伝えた気になりたくはないのです」
わざわざ振り返り、私と視線を交わらせたその人は
それだけ言って丁寧にお辞儀をして、けして引き返せない道を進んでいった。
長いことこの泉を守っていると、時折こういう人が現れる。
伝えるべき言葉も、その相手も持たない私に
それがどういう意味を持つのかはわからないが…
また会えますようにと願うほかないのだ。
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#声劇 #朗読 #台本
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