それは海の記憶で
僕/
それは海の記憶で
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――深夜零時の海を目指して
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[登場人物]
僕...物書きの端くれ。世界の果てまで逃げて、
逃げたけど、そこにあるはずだった藍色の世界は綺麗なんかじゃなかったんだって。
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「大切なものは抱きしめても指から零れていくから」
「世界の終わり方を知っている」
「僕の言葉なんかじゃ、誰も救えはしないだろうから」
「海を見に行こう」
「きっと、その世界の果てに答えがある」
誰かに言いたかったような独り言を呟いて
自転車を漕いで、進み始めた
道標のような街灯の続く道を
海の匂いのする風が頬を掠めて
「あと少し、もう少しで」
久しぶりに笑った、
笑いながら、ただひとりで
深夜零時の海を目指して
「ひとりだよ、僕は。どこまでいっても」
「どうせ死ぬなら、今死んだってさ」
「愛してるなんて、そんな簡単に言えんの?」
「ただ上辺だけの言葉なら」
「誰も、誰にも理解なんてされたくなくて」
「黒く暗いだけの」
底の見えない闇を覗いた。
「悲劇のヒロインぶってんじゃねえよ」
「分からないんだろ、どうせ」
「ばっかじゃないの」 「死ねばいいのに」
言いかけた口癖を飲み込んで、僕は
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「帰ろう」
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※コラボの際は伴奏者様のサウンドへの拍手/使用報告をお忘れなく。
コメント
1件
- kino素敵な言葉をお借りしました。