うそつき
めざめP
うそつき
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#忘鏡創作
サキ様主催企画「スチュアート家の忘れ鏡」
色欲家 元 主人:アイザック・スチュアート(いなり)
【最後の話】
重ねた手の温もりが段々と小さくなっていく。首元の痛々しい痣に気付かなければ、眠っているようにも見える彼とは反対に、僕の身体は赤黒く染まりつつあった。
これじゃあどちらが鏡の力に囚われているのか分からないな、なんて零そうとした笑い声も、こぽりと鈍い音と共に赤く染って地面に落ちる。
僕達が死んだ所で、ゲームは終わらない。寧ろ始まったばかりのこれに、従兄弟達は苦しめられる事だろう。まだ小さいリリィや、外に出られるようになったばかりで何も知らないマルヴィナの事は心配だけど、まだルシフェル兄さんがいるから多少は安心だ。モーリス兄さんは心配する余地もないだろう。クインシーは…よく分からない。彼とは歳も近いし、もう少し話しておきたかったなぁ。
この結末に後悔はない。例え面識が薄くても、家族を殺す事に耐えられる程自分勝手では無いから、正直今離脱できた事は幸運だとすら思う。僕の中にある従兄弟達との思い出は、綺麗なままがいい。それに死後の世界でも、ユキはきっとついてきてくれるだろう。僕には彼が必要だし、彼にだって僕が必要だ。
段々と、世界が霞んでいく。終わりが近付いてくる。もう彼の耳は聞こえないだろうけど、伝えなくちゃならない。ずっと思っていたけれど、ずっと伝えられなかった事。きっと気付かれていたとは思うけれど、それでも。
「大好きだよ、ユキ。」
こんな僕のそばにいてくれて、ありがとう。
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