夜に駆ける
YOASOBI / ユキ(想空葵)
夜に駆ける
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───────2人でいよう。
一次創作企画『スチュアート一族の忘れ鏡』
故人 : 色欲家従者ユキ
#忘鏡創作
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「さよなら」だけだった
その一言で全てが分かった
日が沈み出した空と君の姿
フェンス越しに重なっていた
初めて会った日から
僕の心の全てを奪った
どこか儚い空気を纏う君は
寂しい目をしてたんだ
いつだってチックタックと
鳴る世界で何度だってさ
触れる心無い言葉うるさい声に
涙が零れそうでも
ありきたりな喜びきっと二人なら見つけられる
騒がしい日々に笑えない君に
思い付く限り眩しい明日を
明けない夜に落ちてゆく前に
僕の手を掴んでほら
忘れてしまいたくて閉じ込めた日々も
抱きしめた温もりで溶かすから
怖くないよいつか日が昇るまで
二人でいよう
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【死後の話】
オッドアイ、なんて呼ばれる彩りが異なる瞳。それが僕の瞳であり、両親はそれを気味悪がって、幼くして僕は愛情を失った。
けれど、別に悔しさもない。僕が僕であることに何ら変わりはないのだから。
僕は普通より精神が図太いと思う。
ゴミ捨て場のゴミから食べれるものを漁るくらい必死に地べたを這って生きていたのだから当然なのかもしれないが。
そして今日、足元に転がるのは僕の死体。
そして、主人。
どうして僕達なんだろう、ただ寂しかっただけの2人の人間なのに、2人でも罪を償うには足りないくらいの小さな子供なのに。
彼は僕よりずっと赤に染って、笑い話にしてくれる声も、彼からは聞こえない。
彼だけでも逃がしたかった、彼は母様がいれば生きていける。僕のことを忘れて、きっと生きていける。しかし、そんな願いは叶わなかった。
赤い目が、僕を見張る。
決して自由を許さないようにと。
彼を殺すくらいならと咄嗟に自らの首を絞めた、あの時の僕はきっといつものオッドアイだったはずだ。
赤に反するは青、疎まれてきたこの瞳が僕自身。これは、残された僕が選んだ結末。
間違っても僕は貴方に殺意など向けれない。
けれどそれは目を閉じてしまえばわからない。ただシステムのように、そこに僕の意思などなかったように…ひとつ笑いもせず、物語を閉じた。気づかれていたら恥ずかしいですね。
ありがとう、アイザック様。
時に友人のように接し、時に寂しさを埋めるように傍に置いてくださったその愛情が、僕の冷えた心を溶かしてくださいました。
最期の時は罪の心を、感謝の心とできたこと。欲に塗れたこの家で、僕を守ってくださったこと、そのつもりはなくても僕はそれに救われています。貴方の優しさですね。
感謝をきっとあちらで、思いつく限りの眩しい明日を貴方と共に。
叶うなら、次は友人としてお傍に。
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