神龍の戦
水樹奈々
神龍の戦
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ついに決闘当日、砂漠のフィールドにみりんと理事会員の男、そして遠巻きに見つめる住民達。茹だるような暑さ…正直最悪の環境、敵陣のホームでの戦い。それでも私は私の闘いをするまでだ!決意を新たにするみりん。二人の前に羽衣をはためかせ、宙に横たわる雄々しい炎の神が現れた。つり上がった眉に笑みを浮かべた神は口を開く。
「逃げずに来たか、褒めてやる。倶利伽羅よ、適当にあしらってやれ」
寝転がった姿勢のまま、腕を前に伸ばす。すると、地面から火柱が上がった。炎を纏った剣が現れると剣はやがて龍へと形を変えた。神は現世に居座る事は出来ない。倶利伽羅を呼び出すと、不動神は炎に包まれて消えていった。倶利伽羅…神格の高い炎の眷属…周囲がざわつく中、倶利伽羅はみりんを見据え念を送る。
「すまぬ人の子よ…これも主の意志…例え一時の戯れとて逆らうことは叶わず…覚悟せよ」
灼熱の熱風を吐きながら大地が震える号哭を上げる倶利伽羅、全身の血管を湧き上がらせ、リヴァイアサン!!と憑神の名を叫び上げるみりん。酷暑と極寒が辺りで激しく舞った。
「澪海の主、命の祖、最強の龍王よ!今は我が手足となりて、我が敵を殲滅せよ!!」
リヴァイアサンは六花を放ち咆哮を上げる。砂漠に氷が張り出し倶利伽羅目掛けてトゲトゲしい氷の結晶が突き上がった。冷気を避けながら後退する倶利伽羅。みりんは気を弛めることなく、リヴァイアサンに跨り倶利伽羅へと突進する。氷で創り上げた巨大な大槍を振り上げた。
「甘い!!」
雷が走る様な怒号が頭に響く。大槍が体を捉えたと思った途端、倶利伽羅は業火を纏う無数の剣へと姿を変えた。次の瞬間、剣はみりん達目掛けて雨のように降り注いだ。真っ白な蒸気を上げながら痛々しい叫びをあげるリヴァイアサン。みりんも槍で応戦したが、大ダメージを負ってしまった。やはり相手は精霊…炎の強さが段違いだ。スルト戦でのあの熱を思い出す。あの時は軍隊で応戦したが今は1対1…とは言え、ここで負ければ水が干上がりこの街は終わりを迎える。…負ける事は許されない…。精神を集中させ、冷気を保つ。その間にも炎は集まりだし、また巨大な龍へと形を整えていく…。
造形魔法で形作られたリヴァイアサンは最悪のフィールドの中、受けた傷からまだジュウジュウと白い蒸気をあげていた。目の前で大きくなっていく炎の精霊…みりんはコツンと大きなリヴァイアサンの足元に額を当てた。
「すまない、私が不甲斐ないばかりに痛みを負った。スルト戦からまだ私は強くなれていないのかもしれない…リヴァイアサン…それでも、頼む…私を信じて欲しい。私の強さを…!」
顔を上げるみりん。メキメキ音を立ててみりんを見つめるリヴァイアサン。しばしの沈黙…
「来ぬなら此方から参る。弱りし神の傀儡、目障りだ。まずウヌから焼き尽くしてくれよう」
倶利伽羅は長い尾を大地に打ち付けると周囲に炎が一気に広がり、勢いを増しながらリヴァイアサン目掛けて燃え盛った。しかし、炎は虚空を撫でる…リヴァイアサンは消え去っていた。
「我らカミツキは2つで1つ!!現世に生き抜く命の強さを舐めるな!ゲヘナの者共よ!!」
剣でズタズタにされた防具は美しい氷に覆われ、如何なる熱をも消し去る氷の鎧と化していた。みりんに生えている角も凍り、片方が折れている角も今や水晶の如き神龍の角になっている。みりんはリヴァイアサンの造形をやめ、リヴァイアサンの力を造形したのだ。
更に火力を増して炎をあげる倶利伽羅。もうリヴァイアサンの足はない。己の足で炎へと駆け出した。肌が溶けるように熱い…でも…
「絶対零度の龍王、其の前に全ては零に帰る。歌え吹雪の慟哭!突き進めリヴァイアサン!」
一歩踏み出す度に地面が凍りだす。倶利伽羅に立ち向かったみりんは、リヴァイアサンの爪を宿し雄叫びと共に倶利伽羅の胸を切り裂いた。
「も、もうおやめ下さい…みりん様…悪意や戯れとて…炎は我らの守護神様なのです」
周囲を真っ白に染め六花がヒラヒラまう砂漠…奇妙な風景。倒れた倶梨伽羅の喉元に爪を立てるみりんに皆が頭を下げ慈悲を請う。みりんは魔法をとき、徐々に砂漠は元の姿を取り戻した。
「嗚呼…我は…なんて事を…」
民の姿に倶利伽羅はガタガタと震えて消え去った。すまない、すまない…全ての責任を負っても、この恩と信仰に応えよう…全ての人の頭に声が響いた。…どうやら危機は回避出来たようだ。
キリエに帰還する日、皆に礼を告げて出ていこうとするみりんに理事会員は声をかけた。
「お暇な時で構いません。キリエには僕の想い人がいるのです…いつか返事をと待っているのですが…彼女の気持ちが固まったら答えを聞きに向かいたいので…その…様子なんかを伝えてくれたらなって思います…救ってもらった上に、個人的なお願いをして大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします」
みりんは快諾して街を出ていった。
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「砂漠の理事会員の約束」を入手しました。
(使用するとあるNPCに個人クエストが発令されます。使用は「商店街」にて宣言する事)
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