赤に答える青と黒
絶え間なく藍色
赤に答える青と黒
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手紙を読んで、ふっと投げ棄てる。あーあ、なんで私の周りの男はこうも自分勝手なのか…
考えてくれと思う。彼との思い出、大切なシルバーのアクセサリー。いつものロケットからの懐かしい音楽。私、ここに留まってれば、彼と共に在れるんだよ?店のカウンターを撫でる。
裏世界…確かに昔私もそこに居て、傭兵やらやっていた。里の決まりだもん、疑問無くね。…でも、彼と会って、髪をほめてもらってから…言葉を交わしてから…私はその世界と里を離れた。旅を続けて、仕事をして、キリエにたどり着いて酒場を開いて。過去の私を知らない常連の笑顔、築いてきた表の世界の自分の居場所…それが壊れるかもしれないリスク、そして何より…旅を終えて、新しく歩んでしまったら…彼を捨ててしまうようで…怖い。
「ねぇ、どう思う?今の私ってさ…」
虚空に呟く。勿論、答えなんて無い。分かってる、縋ったってそこに彼は居ない。ゆっくり目を瞑るアキネ。ああ、ヤだな…あの馬鹿の言う通りだよ。愛しい思い出より、チラつくのは危険の中で踊る自分。安寧より冒険に心が反応する…ねぇ、私が旅に出たのは、彼への愛ではなかったの?ただ、危険に身を置きたいだけだったの?
「アキネの里を見てみたいな」
彼の笑顔が閃光のように目の前に浮かんだ。あの時の言葉の続き…
「こんなに素直で、自分らしくあれる…心が真っ直ぐなアキネを育てた里。私はとても興味があるんだ。アキネはいつも等身大で、裏も表もない。どこまでも君なんだ。自分が何をしたくて、何をすべきかいつも分かっている。それは凄く難しいことなんだよ。私はそんなアキネが…」
「ちがう、違うんだよ!私はただ、言われるがまま…自分の考えなんて無くて…!!」
あの日の、あの時と同じ言葉を叫びながらアキネは目を開けた。
…なんなの?なんで私の周りの男はこうも自分勝手なの?なんで人の事わかったようにあれこれ言うの?バカ、バカ!バーカ!!!
「よう、アグル。お前に手紙が来てるぞ?…ってこれ…あーあ、ふられたな…」
アグルが送った手紙が封を開けられた状態でそのまま帰ってきた。…まぁ、仕方ねぇなと呟き、中身を取り出す。
「…っはは。本当におもしれぇ奴…ようこそ、新しい仲間…」
アグルは自分が書いて送った手紙を投げ捨てた。そこには文字の上から大きく「バーカ!!」という文字と、キスマークが足されていた。
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酒場主 アキネをNPCとして歓迎致します。
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