【詩朗読】春と修羅
藤倉 大 / 宮沢 賢治
【詩朗読】春と修羅
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薬味さんのピアノの演奏に、宮沢賢治さんの『春と修羅』の中にある「永訣の朝」の詩、序文を朗読させて頂きました…♪
映画「蜜蜂と遠雷」を観て、いい意味で刺激になりましたかね🎶
僕の中で一番印象に残ったのは、「世界で自分ひとりだけになった時、聴いてくれる人が誰も居なくともピアノを弾き続ける…」と言う台詞でしょうかな♬
僕もいち作家として、今は誰も読んでくださる方が居なくとも、小説や物語、そして詩の執筆活動を続けて行こうと励みになりましたかね🎶
有難う御座いましたm(_ _)m
『春と修羅』
詩:宮沢賢治
「永訣の朝」
けふのうちに
今日のうちに
とほくへ いってしまふ わたくしの いもうとよ
遠くへ行ってしまう私の妹よ
みぞれがふって おもては へんに あかるいのだ
みぞれが降って、表は変に明るいのだ
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)
※( )内は妹の言葉、一般的には雨雪(みぞれ)取ってきてください(ほしいな)という意味。
最後のけんじゃが賢治を指すという説は間違いだそうです。
うすあかく いっさう 陰惨(いんざん)な 雲から
薄赤く、いっそう陰惨な雲から
みぞれは びちょびちょ ふってくる
みぞれはびちょびちょ降ってくる
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)
( 雨雪 取ってきてください )
青い蓴菜(じゅんさい)の もやうのついた
青いじゅんさいの模様のついた
これら ふたつの かけた 陶椀に
これら二つの欠けた陶椀に
おまへが たべる あめゆきを とらうとして
おまえが食べる雨雪を取ろうとして
わたくしは まがった てっぽうだまのやうに
私は曲がった鉄砲玉のように
この くらい みぞれのなかに 飛びだした
この暗いみぞれの中に飛び出した
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)
( 雨雪 取ってきてください)
蒼鉛(そうえん)いろの 暗い雲から
蒼鉛色の暗い雲から
みぞれは びちょびちょ 沈んでくる
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああ とし子
ああ、とし子
死ぬといふ いまごろになって
死ぬという今頃になって
わたくしを いっしゃう あかるく するために
私を一生明るくするために
こんな さっぱりした 雪のひとわんを
こんなさっぱりした雪の一椀を
おまへは わたくしに たのんだのだ
おまえは私に頼んだのだ
ありがたう わたくしの けなげな いもうとよ
ありがとう、私の健気な妹よ
わたくしも まっすぐに すすんでいくから
私も真っ直ぐに進んでいくから
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)
( 雨雪 取ってきてください )
はげしい はげしい 熱や あえぎの あひだから
激しい、激しい、熱や喘ぎの間から
おまへは わたくしに たのんだのだ
おまえは私に頼んだのだ
銀河や 太陽、気圏(きけん)などと よばれたせかいの
銀河や太陽、気圏などと呼ばれた世界の
そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを……
空から落ちた雪の最後の一椀を
…ふたきれの みかげせきざいに
二切れの御影石材に
みぞれは さびしく たまってゐる
みぞれは寂しく溜まっている
わたくしは そのうへに あぶなくたち
私はその上に危なく立ち
雪と 水との まっしろな 二相系(にそうけい)をたもち
雪と水との真っ白な二相系を保ち
すきとほる つめたい雫に みちた
透き通る冷たい雫に満ちた
このつややかな 松のえだから
この艶やかな松の枝から
わたくしの やさしい いもうとの
私の優しい妹の
さいごの たべものを もらっていかう
最後の食べ物を貰っていこう
わたしたちが いっしょに そだってきた あひだ
私たちが一緒に育ってきた間
みなれた ちやわんの この 藍のもやうにも
見慣れた茶碗のこの藍の模様にも
もう けふ おまへは わかれてしまふ
もう、今日おまえは別れてしまう
(Ora Orade Shitori egumo)
私は私で一人逝くから
ほんたうに けふ おまへは わかれてしまふ
本当に今日、おまえは別れてしまう
ああ あの とざされた 病室の
ああ、あの閉ざされた病室の
くらい びゃうぶや かやの なかに
暗い屏風や蚊帳の中に
やさしく あをじろく 燃えてゐる
優しく青白く燃えている
わたくしの けなげな いもうとよ
私の健気な妹よ
この雪は どこを えらばうにも
この雪はどこを選ぼうにも
あんまり どこも まっしろなのだ
あんまりどこも真っ白なのだ
あんな おそろしい みだれた そらから
あんな恐ろしい乱れた空から
この うつくしい 雪が きたのだ
この美しい雪が来たのだ
(うまれで くるたて
こんどは こたに わりやの ごとばかりで
くるしまなあよに うまれてくる)
(生まれてくるにしても
今度はこんなに自分のことばかりで
苦しまないように生まれてくる)
※人様の役に立って苦労したい
おまへが たべる この ふたわんの ゆきに
おまえが食べるこの二椀の雪に
わたくしは いま こころから いのる
私は今、心から祈る
どうか これが兜率(とそつ)の 天の食(じき)に 変わって
どうかこれが兜率の天(仏教用語で天界の一つ)の食に変わって
やがては おまへとみんなとに 聖い資糧を もたらすことを
やがてはおまえとみんなとに聖い資糧をもたらすことを
わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ
私のすべての幸いを懸けて願う
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nana一番乗り...?某ピアニスト映画に出てくる課題曲の冒頭です!
YouTubeに上がっていたものを耳コピしてみました。
譜面に起こしてみたところ、臨時記号、拍子感もろもろでお手上げでした笑
(そのため間違いは勘弁してちょ)
とくに音楽やってる方に是非見ていただきたいリアリティを追求した映画でした!劇場へ是非!笑
#蜜蜂と遠雷 #ピアノ #拍子とリズムと拍は適当
#春と修羅 #藤倉大 #宮沢賢治 #永訣の朝
#又三郎
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