「幸せの青い蜜蜂」(星干し3完結)
秘密結社 路地裏珈琲
「幸せの青い蜜蜂」(星干し3完結)
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星干しさんアンサー↓
https://nana-music.com/sounds/0514f775
「光源をここに集めるんだ。いいかい、それでこのラインに来た瞬間に、全員で一斉に叫ぶこと。さっき僕ら見て悲鳴あげただろ、ああいう不協和音がいいね!人間ってやつはひとりぼっちの時にアレ聴くと、ものすごぉ~く不安になるの」
石を協力して地面に転がして回った通路は、足場が悪くて一人ずつ通らざるを得ない状態。蔦を移植して入り口の明かりを出来るだけ遮ってしまったら、中腹の大岩群の影にかき集めた光苔と懐中電灯で、木と葉っぱで組んだお化けのお面を照らして出来上がりだ。
「こっ.......わ、上出来っていうか、逆に心配になるレベルだなこりゃあ...」
「死人が出ようが自己責任です、こっちだって命賭けて逃げてるんですもの!自然の摂理に挑むなら甘えは許されないと思いしらせなければ!」
「君そういうとこブレないよね、僕好きだよ、その感じ」
それから先はトントン拍子だった。洞窟の奥で星干しとサトウのお手製“祟り”にあった密猟者が、負傷して命からがら逃げ帰ってくれたおかげで、洞窟にはあっという間に人が寄り付かなくなった。星干しのまとめた洞窟内の植生、“青い蜜蜂”に関するレポートを元に、学者達が権威と知恵であっという間に保護施策を打ち出し、少しずつではあるが住処を取り戻す算段がついたのである。
「で、君はお礼にお友達からその蜂蜜を時々お裾分けしてもらえることになったって?」
「ひとりで集められるのは、1日に彼女たちサイズのバケツ一杯分だから、イイって遠慮したんですけど......」
「ははは!見た目のまんま、可愛い言い訳だ」
「へ?」
「ほら、窓のそと。よっぽど君に惚れ込んでるんだろうね」
花飾りとタンポポのファーでおめかしして現れた、小さな友人達。
彼女達は今日も元気いっぱい、珈琲屋の窓にタナカがこさえた専用の小さな出入り口をくぐって、星干しに会いに来る。“お茶にしよう“と、ビンの蓋のカップが3つ並んで、サトウが店の看板を裏返した。
ところで、蜜蜂事件から星干しの元に届いたのは、件の蜂蜜だけではない。
ある日ポストに投函された古風な招待状には、こんな文面が記載してあった。
”背景 親愛なる友人 星干しさま
君にひとつ謝らなければならない事がある。あの日私は、植物学者として君の前に現れ、共に自然保護に関わる重大な事件の収束を図った。しかし、その裏で君を試していたことを、今ここに告白したい。長年危機感を感じ、しかしながら進展する事ができなかった、青い蜜蜂、妖精の権利保護。君が、それを大きく改善した功績を称えて、ぜひ我が協会の会員としてお誘い申し上げたい。前向きな返事を期待して
国立研究法人 北部神話生物学協会 会長“
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北部神話生物学協会、又の名を”不思議学者の会“に所属しました。
不思議の研究者、星干しさんとはあなたのこと。
コメント
2件
- 秘密結社 路地裏珈琲
- 星干し拝啓 北部神話生物学協会 会長 様 日頃、研究会ではお世話になっております。 こんなにも心踊る場所へお誘いくださり、より一層充実した日々に好奇心が落ち着きを見せてくれないほどです。 さて、話は変わりますが先日私はNorth Celestia自然史博物館へ、とある絵を観に行きました。 話題になっているのでご存知かとは思いますが、特別展示の幸せを祈る青年です。 とても素敵な絵だと思うと同時に、なにやら感情を揺さぶられるような不思議な感じがするのです。 常設展の展示品も同様、まるで何かが宿っているような神秘的で不気味なものを感じます。 一緒に行った友人はそれらに怯えているようでした。 あの博物館には何かある。 私にはそうとしか思えないのです。 そこで昔の新聞記事などを調べたのですが、とある議員が監修をした博物館であることなどがわかったのみで手詰まりとなってしまいました。 記事にあった、1つでも多くの不幸な芸術を救う、ということも何か引っかかりを覚えます。 どうかこの件に関して、私の調査にご協力していただけないでしょうか。 何か博物館に詳しい人、美術品に関する不思議に詳しい方がいたらご紹介いただければ幸いです。 良いお返事をお待ちしております。 追伸 先日の"青い蜜蜂"の件ですが、傷ついた子も回復し元気な姿を見せてくれるようになりました。 可愛らしい小さな友人とこうしてのんびりできるのも学者様方、協会の会員様のおかげと思います。 ぜひ、お時間ございましたら私たちのお茶会にいらしてください。 マスターの美味しい珈琲と軽食に、"幸せの蜂蜜"をそえて… 路地裏珈琲でお待ちしております。 不思議学者の会 会員 星干し