「珈琲におまじない掛けてください(星干し完結)」
秘密結社 路地裏珈琲
「珈琲におまじない掛けてください(星干し完結)」
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「ダメよ、そんなんじゃ」
「えっ」
「生ぬるいおまじないや占いなんかで、受け身に徹して何か変わるのを待つばかり...そんなんじゃダメ、勝てない」
待ってくれ、今なんか恐ろしく厳しい台詞が聞こえてきたけれど、僕の空耳だろうか?想像の斜め上を行く回答に、思わず笑顔を作ることも忘れてぐりんと振り返った。
瞬きの回数が増える。星干しは、アイスコーヒーを持って行って、大人しく笑顔で”何故おまじないをかけてほしいのか“って聞いていたんじゃなかったっけ。それで女の子は確か、もじもじしながらこう言ったはずだ。最近好きな人との仲を、ライバルの女の子に邪魔されて取られちゃいそうだから、応援して欲しい。
それに向かってあの子、即答なんだから恐れ入る。顔は真顔、本気のダメ出しじゃあないか。面白いからしばらく傍観をキメていたら、彼女はドサりと一冊、分厚い本を机に叩きつけるように置いて、それを女の子に勧めた。
「126ページ」
「あ、あのう...」
「雨乞いよ、声にだして読んで」
「でも...!!」
「相手はチームプレイで外堀を埋めていると聞いたわ。ならば、さあ!不器用なあなたは、心を込めて本気のおまじないで差を付けるの、彼を振り向かせましょう!!」
遊園地デートを雷雨で叩き潰し、図書館デートを勝ち取るのだと...彼女のおまじない、こと、ほぼほぼ呪詛の厳かな声が、切実な乙女達の声と絶妙に絡み合い、店内に響きわたるのを、僕は黙って斜め下を向いて聞いていた。
「......迂闊だった。一番ヤバいの星こだった.....」
早めに事の顛末を知りたい君に、そっと耳打ちしようと思う。それから1週間後、女の子が見知らぬ男の子と笑顔で来店した。その時の星干しのやりきった清々しい笑顔と、あの日の呪詛の響きといったら......僕は何も知らないふりをして、チョコレートを2つ、コーヒーに添えてサーブした。
多分、一生忘れない。
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女の子はとっても嬉しそう!
サトウさんと、ちょっと仲良くなった。
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