「冒険者のひと匙」(星干完結)
秘密結社 路地裏珈琲
「冒険者のひと匙」(星干完結)
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「マスター、こんなのはどうだろう」
僕は彼女が描いた、大変力強い絵画のような設計図に、ゴクリと喉を鳴らした。
「クリームチーズ...!?」
「そう、ホイップに混ぜる」
お絵描きの最中に聴こえていた、ご機嫌なあの歌声みたいな、こっくり、ぽてりとした爽やかな風味...味の想像はつくけれど、そこに珈琲の味が入ってくるとなれば話がややこしい。僕があからさまに疑いの目を向けたから、彼女はごほんと咳払いをして、再び紙に何か描く。
「マスター、今この一皿に決定的に足りないのはこれだ」
「ぼ......冒険、心?」
「いかにも」
なんて感覚的なアドバイスだ、しかし間違ってもない気がする。したためられた3文字の書が、あまりにも強く僕に訴えかけてくるものだから、ままよとばかりに冷蔵庫へと走った。合わなかったらどうしようって、及び腰で浅くチーズに匙を刺したら、彼女の手が伸びて来て、思いっきりざっくりやってくれた。
「安心して、ティラミスはエスプレッソとクリームチーズでしょ、大丈夫。多分。ひと思いに!!」
彼女の勢いに負けて冒険したこのひと匙は、一体どんなハーモニーを魅せてくれるのか......僕は分かった、と頷いて誠心誠意クリームチーズのホイップを立てる。そうだ、成功は犠牲と探求のもとに約束されるんだ。冒険を恐れちゃならない。
僕は出来上がった未知なる皿を手に、何食わぬ顔でスズキさんを呼んだ。
* * * * * *
お声とお歌のイメージから。
お粗末さまでした。
コメント
2件
- 秘密結社 路地裏珈琲😁👍✨
- 星干しスズキさんがぎせ…いやいや、きっと美味いなって褒めてくれるはず! 続きが気になってしまう試食会でした✨ ありがとうございます!