【声劇台本】海の名前
✿青年( 彩奈)×❀少女( )
【声劇台本】海の名前
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海をみてゐた。
波打ち際の彼女は、幼い子供のように
無邪気に笑っている。
❀「ねぇ。」
彼女が僕に振り返る。
✿「何?」
❀「私達いつか、海に帰るのね。」
潮風になびく髪を耳にかけながら
寂しげに彼女はいった。
僕は、彼女の言葉に答えられなかった。
❀「ごめんね。」
彼女の小さな身体が黒い海に呑み込まれる。
霧が月の光に吸い込まれていくみたいに
彼女は消えていった。
僕はそんな彼女をただ見ているだけだった。
✿「人間は、孤独な生き物さ。
僕達の渇きはもがけばもがくほど
癒えることはないさ。どんなに愛したって
愛されたってね。」
僕の戯言をさざ波が笑う。
✿「でも、この押し寄せる波のように
僕達はまた会えるかな。」
哀しさと愛しさの隙間の美しさ。
刹那に明滅する僕らの命の火種。
でもそれはきっとこれからも
絶えることは無いのだろう。
…少なくとも僕はそう信じていたいのだ。
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