腐泥の亡者譚

腐った泥に塗れた世界 終末まで後一週間 空は目も覆いたくなるような 真っ赤な肉のような雲がぎゅうぎゅう詰め 希望を糧に抗うもの 無を崇め傍観するもの 絶望の元殺し合うもの それぞれが胸に蔓延る意思のままに動いた この世界に方舟なんてない ましてやメサイアなんて現れなかった この地に骨を埋めた愚かな死者は 小さきエピタフにて語る 過去現在未来の全てを集め 自身の並べた大言壮語の数々を 掃き溜めの少女から屑の聖者になった者 正義を憎み個を守ろうと誓った悪人 悪を許さず正義を持って多を守る守護者 かろうじて逃げた先の星で誰かと共に生きた亡霊 滅びゆく世界に愛を感じ死を選んだ少年 そして全ては腐泥に包まれた 彼らを知るものはもう誰もいなくなった 終わりを告げられた世界は 役目を果たして満足そうに笑った気がした