

ボイストレーナー田原先生の「nanaで歌うまボーカルレッスン」vol.1 〜歌が上手いってどういうこと?〜
Apr 09, 2018みなさん、こんにちは!ヴォーカルスクールVOATのボイストレーナーの田原です!
日頃nanaを利用されていて、しかも今日この記事にたどり着いたみなさんは、きっともっと上手く歌えるようになりたいなぁと、心のどこかで思っていることと思います。
そんなみなさんのお悩みを少しでも解消するべく、今回から数回に渡って、歌が上達するためのワンポイントアドバイスをお届けしていこうと思います。どうぞ、よろしくお願いします!

目次
「歌が上手い」ってどういうこと??
発声が表現の鍵を握る
ピッチ(音高)がもつ力
100分の1秒が大きな意味をもつ?!
「歌が上手い」ってどういうこと??
さて、第1回目の今日は、超根本的なテーマとして、「歌が上手いってどういうこと?」についてお話ししていきたいと思います。
普段ボイストレーニングのお仕事をしていて、よく、「歌が上手いってどういうことなんですか?」という質問を受けることがあります。確かにこの疑問、いざ考え始めるとすごく難しいんですよね。
例えば、歌を初めて習いに来られた方が、「自分は声が小さいので…」と悩みを話してくださることがあります。確かに一般的に見て、大きな声で歌うことを良しとする風潮があるのは事実だと思います。小学校の音楽の授業でも「大きな声で歌いましょー!」なんて言われた記憶がある方も多いと思います。
でも実は、プロのシンガーの方の中には、皆さんが考えているほど大きな声で歌っているわけではない方も多くいらっしゃるのです。
つまり、声が大きいことが歌が上手く聞こえるための絶対条件というわけではなさそうです。
この他にも、音程は合ってるように聞こえるけど、なんかグッと来ない歌、とか、逆に音程はダイナミックに外すけど、なんかグッときちゃう歌、というのもあるわけです。
こうなってくると、歌が上手いって何だろう、という問いに答えるのはとても難しくなってきますね。
そんなことを色々と考えた結果、最終的にいつもたどり着くのが、「結局好みの問題なんじゃない?」という答えだったりします。
実際、あるシンガーをとてもリスペクトしている人もいれば、そのシンガーが大嫌いな人もいるわけです。なので、少なくとも、それを職業にするというのでないならば、最終的には自分の好きなように歌うこと、が一番大事なのかなと思ったりもします。
でもそれじゃ話が終わってしまうので(笑)、今日は、「じゃあ最低限ある程度上手に聞こえるためには何をすればいいの?」というところを掘り下げてみようと思います。
さて、歌が”ある程度上手に聞こえる”ための条件、みなさんは何だと思いますか?色んな要素が思いつくと思いますが、私は次の3つを挙げたいと思います。
- 発声
- ピッチ
- リズム
いかがですか?みなさんが考えられた要素と同じだったでしょうか。色んな意見はあることと思いますが、一つ一つの項目がどんな風に大事なのかについてお話ししていきたいと思います。
発声が表現の鍵を握る
「え?歌って表現力が命なんじゃないの?!」
とおっしゃる方も多いと思います。はい、まったく私も同感です。
やっぱり卓越した表現力をもった方の歌というのは、聴いていて思わず引き込まれてしまいますね。ですが、この「表現力」を形作る要素は何なのか、ということを突き詰めていくと、実はそれは、「声のコントロール力」だったりするわけです。
例えば、電話越しに親しい友人と話しているとき、「あれ?今日はなんか元気ないのかな?」とか気付くことってありますよね。
これは、顔の表情ではなく、声の表情から相手の感情を感じ取っているということです。元気がない、という感情が声に現れているということですよね。
そして私たちはどうやってそれを感じ取っているかというと、声の大きさ、声の高さ、声の明るさ、言葉の発音の仕方、などの微妙な変化を聞き取っているのです。
これは裏を返せば、こういった声の要素を巧みにコントロールすることができれば、声で感情を表現することができるということを意味しています。仮病で学校や会社を休もうとするときに、わざと辛そうな声を出す、アレですね(笑)。
逆に、いくら気持ちを込めようと思っていても、声のコントロールがうまくいかなければ、それが声の表情として現れることはないわけです。
つまり、自分の声を自在に操る技術こそが、歌の表現力に直結しているということなのです。

ピッチ(音高)がもつ力
次にピッチのお話です。
昨今の音声編集技術の進歩は目覚しく、このピッチと、後でお話するリズムについては、かなりの精度でコンピュータを使って修正することができるようになりました。

このような画面で修正をすることができます。上下は音の高さ(ピッチ)で、紺色の線でピッチの動きが表されています。これを修正したものがこちらの画像。

間違い探しのようですが、部分的にピッチが平らになっているのがおわかり頂けるかと思います。
試しに、「んー、この人の声はすごくいいんだけど、ピッチとリズムがなぁ…」という方の歌を録音して、
ピッチとリズムをバッチリ修正してみると、
アラ不思議、すごーく上手く聴こえるんですね。
※こちらのサンプルは、わかりやすいようにわざとピッチとリズムを外して歌ってもらいました。
こういった実験から、やっぱりピッチとリズムが歌の上手下手を決める大きな要因であることは間違いないようです。特にピッチは、それほど音楽の経験がない人でも、「あ、ちょっと音ズレてるぞ」と気付いたりすることも多いと思います。
正しいピッチで歌う力を身に付けることは、歌が上手いと思ってもらうためには、避けては通れない道かもしれませんね。
100分の1秒が大きな意味をもつ?!
そして最後に登場するのが、先ほども少しお話ししたリズムです。
リズムと一言にいっても、色々複雑な要素がからまっているので、きちんと理解するのは意外と難しいのですが、まずは、”伴奏に対して声を出すタイミングがきちんと合っているか”というところに注目してみるのが一番シンプルで理解しやすいと思います。
例えば、nanaで歌を録音して聴いてみたとき、「なんとなく自分の声が浮いて聞こえるなぁ」とか、「なんかバックの音楽と馴染まないなぁ」ということを経験した方もいらっしゃると思います。
そういった場合、音量や音質の問題など、色んな可能性はあるのですが、リズムが合っていないケースもかなり多いと言えます。
リズムの微妙なズレはなかなか感じ取りにくいものですが、実はプロのレコーディング現場では、タイミングを100分の1秒ほどの細かな単位で微妙に調整したりもします。そのわずかな差が、無意識のうちに聴き手の印象を大きく左右したりするんですね。
ちなみに先程のサンプルで、ピッチ加えてさらにリズムを修正したものがこちらです。
自分で聴いても気付かないくらいの小さなズレが、先ほどの”何か浮いた感じ”に繋がっていたりするのです。正しいリズムで歌えるようになることも、歌の上達には欠かすことのできない大きな要素なんですね。
いかがでしたか?
これら3つの要素を伸ばすことによって、あなたの歌はきっとこれまでよりももっと魅力的に聞こえるようになるはずです。
さて、問題はどうやってこれらを鍛えていくか…これについては次回以降、順を追ってご紹介していこうと思います!どうぞお楽しみに!
最後まで読んでくださってありがとうございました!また次回お会いしましょう!
シリーズ記事
vol.1 〜歌が上手いってどういうこと?〜
vol.2 〜理想の声のレシピとは?〜
vol.3 〜声帯のストレッチ・エクササイズ〜
vol.4 〜声を響かせる共鳴〜
vol.5 〜音程を改善する秘策、、、キーを変えてみる!?〜
vol.6 〜音程を良くするエクササイズ〜
vol.7 〜歌のクオリティを左右するリズム〜
vol.8 最終回 〜リズムの捉え方〜