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🗝地下室〖????〗🗝

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ュンバミ74
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???? -そこには1枚の紙切れが置いてあった- この部屋を目撃した者は必ず入るように。 ※当コミュニティでの発言は禁止です※ (運営より指示のあった者のみ発言が許されます) ※道化の華〖circus団〗団員以外(関係者以外)の方も参加することができます※ ※地下室を発見した者は当コミュニティに参加してください※
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    私たち二人が団長から仰せつかったのは、至極簡単なことで、 1つに、何を見ても動じずに会話を合わせること 2つに、決して鏡を見てはいけない この2つを守るように言われた。 これは至極簡単なことだと、そして重要な仕事だと。 彼の書斎で話されたのは本当にこれだけで、あとは実際にやらなくては分からないからと半ば強引に背中を押されながら書斎を後にし、私たちの寝室まで案内されたのです。 そこにはただ、私たちの寝室の扉があるだけでした。 「あの、一体これは……」 「こんなつまらないジョークをボクがすると思うかイ?」 「いや、その……」 咳払いのように抑えた笑いをした彼は、困惑している私たちを愉快に思っているようだった。 「ハナシは一見にしかずってね!サ!行きたまえ!!」 そう言うと勢いよく寝室の真鍮製のドアノブをキュッとまわし引開ける。 目の前に拡がる光景は寝室のそれではなくて、春の突風がこちらに吹いてくる。 パンッ と背中を押された私たちは扉の中へ、横目に見た団長の目が微かに黄昏色に染まっていた気がした。
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    コンコンコン。 「入ります」 黄金色の、以前も握ったドアノブをくるっと回して中に入った。 「やァやァ、待っていタよ!」 そこには書斎机の椅子に腰掛ける団長と、ドアが空いた音に反応してこちらを見ているみやびさんが立っていた。 ああ、これは終わったなと。 この間ここで物色し、あの写真立てを見た事を咎められるのだと心中察した。 「七希さん……」 「お呼び立てしてすまなイねえ」 部屋に入るなり、緊張と罪悪感で前を見ることが出来なかった。 俯いたまま、この2人の声を私は聞いている。 団長はきっと肘をつき指を組むなりこちらを真っ直ぐ見すえニヤリとしている。 きっと次にあの方の口から出る言葉は私にとっての幸せの全てが終わる言葉でしかないと思っていた。 そう思っていた。 「顔を上げ給エ! 君たちに仕事”たのみ”がある!」
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    今日は火曜日、お夕飯を食べに宿舎の大広間に行く。この団では曜日ごとにお夕飯を作る当番が決まっており本日はビーストに所属する団員たちが私たちの胃袋のお世話をしてくれる。 「ヘイ!お待ちーいッ!!!」 ドンッと皆の前に皿が置かれる。 「これは俺ちゃん特製の……なんだっけ??」 「ちょっ、アタシらも一緒に作ったんですけど!?」 「はは、それはね、炒飯って言うんだよ。遠い異国の料理さ。」 レタさん、naonさん、そしてきゃんさんが配膳をしながら他愛もないやり取りをしている。 今期のビーストはこの3人が担っていた。 「そそ!チャーハンね!!」 「冷めないうちに食べなさいよね」 「余り物を活用しただけの簡単なものだけれど、味は保証するよ」 こうやって夕飯の時だけは食事は私たち団員で作り、そしてできるだけ皆が食卓に揃った状態で一緒に食べる。 そんな家族のような日常を毎日過ごすうちに自然と絆が生まれていく。私も、そして皆も”この当たり前の日々”が毎日続くことを信じて楽しく、そして献身的にサーカス団の団員として働いている。 ここにいるものは色々な立場や人種のものが居て、来るものを拒まず、皆同じ人間として扱われる。本来であれば腫れ物のように扱われる者や日を浴びて生きて行くことを社会が許さない者も、団長のいるこのサーカス団にいることでありふれた普通の生活をすることを許されている。 だから団長に救われたものが多く、彼を慕い自らの意思でここで皆働いている。 私もその1人だけれど、恐らくここにいる皆よりかは平凡な生活で何不自由なく暮らしていたから、申し訳ない気持ちがあるけれどそんな皆を支えていきたいと思っていた。 そんな矢先、 団長から声がかけられる。 夕飯後、少し話がしたいと
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    「七希さん?」 書斎のドア口に見慣れた人がたっていた。 一瞬団長かと思ってヒヤリとしたけれど、振り返るとインナーカラーが特徴的なその人がにこりとこちらの様子を伺って来た。 「何かお探し物ですか……?」 そう言われて写真立てを指さし見せる。 その後のことは、私がどうしてこの部屋に来てこれを見せたかとか色々話したが、どうやらたまたま通りがかったみやびさんはこの書斎のドアが空いていたので覗いて見たのだそうで。 そうこうしているうちに私は掃除終わりの号令の時間が来たのでみやびさんと共に書斎をあとにした。 この後しばらくは特に何事もなく、日々を過ごしていた。
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    _某日、団長書斎。 以前街角のカフェでランチをご一緒した時に聞いたことがある。書斎に用があったるりねさんが、窓際の本棚の上段に『奇妙な写真』が飾ってあると。正確に言うと、奇妙、ではなくただの『写真』なのだけれど、彼女の口から出る話にこちらが合わせるのが難しく、彼女にしては珍しく信憑性に乏しい話を真剣にしている姿を見て実際に確かめようと思い至った。 機会はすぐにやってきて、宿舎の清掃は昼間の時間にスタッフが各フロアを分担かつ交代制で行っていて、水曜の今日は私”七希”が団長の書斎を掃除する番。曜日は固定で水曜日はスタッフ全員がそれぞれ分担された場所を掃除するのだけれども、来週の私はマリオネットの楽屋の掃除、先週の私は小道具の整理などをしていた。 とてもタイミングよくあの話があった翌週に機会が回ってくるなんて、なんの偶然かとも思ったけれど…。 午前中のこの時間は団長はいつも不在で、ステージでリハーサルや練習をしている午後にふらっと其方に現れる。なので、滅多なことがなければここで出くわすことがないので調べたい放題だが、あまり時間をかけると掃除の終礼に間に合わないのでのんびりしてはいられない。 目当てのものを見つける。 それは書斎に入って正面、こちらと対面する形で配置されている書斎机の右側の大きな窓際に例の本棚があった。 「……本当ね、、、。あった。」 まさか本当にあるとは思わなかった、撮った覚えのないセピア色の写真。だけれどここには団員全員が写っているようで、中央に映る見覚えのない髭の紳士と傍らに居る幼い副団長とあと一点の違和感を除いて。 単純に考えて、副団長がこのくらいの年齢のころに私は入団していない、ここにきて2年が経とうとしてるのならば尚更。その年数で幼女が立派な大人になろうとしている齢を迎えるなんて無理がある。なのにこの日焼けした写真に私”たち”が写っているのだ。 「___さん〜?」 背後から突然呼ばれた。
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    現場のステンドグラスが赤くマットに染まるほど、凄惨な夜であったと伺える
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    〖オカルト事件発生?〗 本日未明 郊外に佇む大聖堂にて行方不明者が多数発生。現場は血の海となっており、荒らされた形跡が残っていた。現場の大聖堂には200年以上前より現存するステンドグラスが有名な観光地ということもあり、人の少ない夜間に襲撃したと断定される。 一輪の薔薇の華が丁寧に献花されていた。 犯行時刻は深夜0時〜2時の間に行われたと推定。ここ数年続いていた怪事件と同等の犯行手口から同一犯であると断定される。
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    宵月、天上。 「いやはや!素晴らしいね!実に素晴らしラット達だ!」 断末魔 「祈りたもう。きっとこれは救いなのだと信じて、います。」 「……ごめんなさいね。」 命乞い 「仕方ないのよ。」 「あの人の望みなら……」 後始末 「俺が変わりにやれば、みんなの手が汚れることはなかったけどさ、そんな度胸なかったよ」 「また次があるはず」 解体 「一体これは何のサンプルなんでしょうか……?珍しい素材ですね。でも何だか鉄分が多い個体な気が。」
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    ロンドンタイムズの一面 〖謎の殺人鬼、再来か?〗 本日未明 市街邸宅にて行方不明者が多数発生。被害者の体の一部と複数の血痕並びに一輪の薔薇の華が発見された。 犯行時刻は深夜0時〜2時の間に行われたと推定。ここ数年続いていた怪事件と同等の犯行手口から同一犯であると断定される。 実に半年ぶりの犯行として、警戒が緩んでいた矢先の事件。 現場はこれまでの事件より凄惨な状態であり、邸宅の中は血の海であったと調査団体がコメント。現場の状況から複数犯であり、行方不明者は死亡、犯人はこれまでとは違う人物らであると推察。 外からもその様子が分かるほど、窓ガラスがべっとりと赤く染っていた。 近隣の自警団は被害拡大を防ぐべく、警戒網を強化するとコメントしている。
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    _だって、ボクが見込んで選んだ”ファミリー”だった者だモノ。 ここでは、そうでは無いけれどサ。
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    「それより、なんて思ってないだろうに。キミは本当に心の根から獅子のようだな。」 掛けられた言葉に対して反応した彼は、休む間もなく動かしていたナイフとフォークを置いて、凛とした姿勢になりこう問うた。 自分には身に余る大役と、ここで経験したことの全てという贈り物を貰い、満足したと。 だが満たされていても何か足りないものがある、最近それの手がかりを掴んだと。 「客席に、見覚えのある顔のヤツがいたんです。」 そいつとは10年来の付き合いで、同じ貴族の出身で、自分がここに来る前はそいつとつるんでいたと。 「でも不思議と、居ないはずのアイツとここで一緒に過ごしてるような感覚があって」 懐古の気持ちが増したのか、本当に彼が望むものが手に入ったからかは定かでは無いが、客席にいた手離したくない存在を見失いたくないという理由でここを退きたいとの申し出を随分と前に団長はされたのだった。 「舞台袖でキミがみていた赤いメガネの坊やかイ?」 よくご存知で、と言った顔で微笑み返す。 「それは、あんな熱い視線を送っていたら誰でもわかるだろウに」 口元を隠しクスりと笑う団長、その時瞳が微かに黄金色に見え、なにかいっているような気がしたが… 「左様なら、蓮!キミの今後の活躍とご多幸をいのっているよ」 「そちらも達者で!美味い飯と最高の生活を有難うございました!!」
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    「それで、キミの答えは何だったカナ?」 「(もぐもぐ)……えっと、何でしたっけ??」 豪勢な食事が揃う食事風景。 細工の美しい銀食器を傍らで磨く柘榴。 そのどれもが美しく、しかし見たことの無い食材で、食欲のそそる香りが立ち込める。 次の料理の準備ができると、手際よく配膳している。 長い食卓の真っ白なテーブルクロスのひかれた両端で、団長と蓮は向かい合うように腰かけ食事をしていた。 「まったく、キミと言うやつは…というか、それがまたキミらしくて素敵といったところかネ?」 料理が目の前にあるにもかかわらず、不思議と或いは意図的なのか一口も手をつけず、ワイングラスを片手に団長は語る。 「まあ、どう問うてもキミの答えが変わらないのは目に見えているか……HAHAHA!!」 「そんなことよりこれ美味いっすね!」 やれやれ、といった顔をするものの そして高笑いをする。 「HAHAHA!! 本当にキミは面白いなァ。」
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    こんなことがあったなんて、退団したとて悟られまいとするのはやはり難しいところではある。
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    時刻24時、??? 暗くてよく見えない部屋に転がるそれらを処理する任だった。 支配人がいつもしていることを、支配人は用事があるからと団長から頼まれた。 3人分の生ぬるい感覚を永遠と感じながら、何も見えないそれを綺麗に、丹念に、処理していった。 「やァやァ!!お疲れサマ!」 お姿は見えず、扉から差し込む光に映る影しか見えなかった。 「団長殿。」 「頃合いカナ?って思ってサ、どうだいピッタリだったろウ?」 鼻高く、褒めたたえてほしそうな口ぶりは相変らず団長らしいなと安堵する。 「キミの手を煩わせてしまって申し訳ないネ、ちょっと彼女はここに連れてくることは出来ないからサ」 「お勤めご苦労!……本当によく頑張ったネ、JuN。」
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    旧市街_昼(荷馬車) あの日のことを未だに考えている。 支配人の助言で不審な動きをしている団員の調査を頼まれた。 話を聞かずに手をかけてしまったことは悪いとは思っている、ただ、美しい思い出のままでありたかっただけだったから、そんな理由で。 ……思い出? しかし、あの状況はそう思うしかないでしょうよ。 「どうしました?Liaさん」 気にかけて声をかけてくれたJuNさん。 随分と曇った顔をしていたのだろう、肩を叩かれる。 「……別れは寂しいです、楽しかったサーカスでの日々も今日でお別れ。でも彼らは世界中を旅するでしょう?いつかきっと、また会えますよ。」 「そうですね……それはそうと、まさかJuNさんも降りられるとは思わなかったな。」 「はは、まあちょっと、色々見て回りたいなと思いましてね。」 そんな他愛のない話を小一時間はしていただろう。2人の荷物を乗せた荷馬車はあぜ道をカタカタと長閑に走る。 お互いに隠し事を悟られぬよう、探り探り会話している点を除いてはあの出来事を忘れるくらい本当にのどかな時間を過した。 「結局……」 旦那には何も言わずに去ってしまったけれど、落ち着いたら手紙のひとつでも送っておこうと思う。
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    ページを開き思わず腰を抜かす。 そこには血まみれのよく編まれたブロンド髪の一端が挟まっていた。 滑らせた手から抜けた手帳からは大量の血液が吹き出し、息が出来なくなるほど恐怖する。 「何をしているの……?」 後方から突然声をかけられた。 桃色の髪の見覚えのあるその人が、目下の状況から懐にしまっていたナイフを私に向ける。 「ち、ちが……」 「なんてこと」 血相を変えて臨戦態勢を取られた。 腰が抜けてしまった私は恐怖で震えも止まらず動けないでいたが、僅かに動く眼球で下を見る。 「え……」 気づいた瞬間に膝に重さを感じたそれは、首元にしめられた跡のついたしおせと三つ編みを握りしめていた自分の両手から滴る血だった。 「裏切り者は貴方だったのね、、、信じたくなかった」 「まって……違う、違うってば」 「最期くらい静かにいきなさいよ。」 姉だったものに手をかけられる。 すごい速さで喉を切られてしまった、カッと吐血するがその生命活動は無駄に終わる。 わけも分からないまま、ここで死ぬのか。 ああ、せっかく思い出したのになぁ……
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    中は埃っぽく、暗く長い廊下が続いていた。風を吸い込んでいたはずなのに空気の流れがまるでなくて、まっすぐ長く続く廊下の先からだろうか、オイルランプの匂いがツンと漂っている。 不思議とこの長い廊下を一歩、また一歩と歩みを進める度に思い出す。 ここで過ごした日々、頭の中の霧がどんどん晴れていくような気がして、足取りが少しづつ軽くなっていった。 ああ、そうか、かけがえの無い時間を 私は過ごしていたんだ。
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    「なんだ、これ……」 土塊をたどって着いた先は1階の、玄関がある”はず”の場所だった。 そこにはガラス窓が美しいいつもの玄関扉ではなく、ありとあらゆる光を遮断する重く冷たい鉄の扉だった。 寝ていないせいなのか、眼を擦ってみるけれど様子は変わることはなく”元々そこにあった”ような佇まいで鎮座していた。 扉には南京錠が着いていたけれど、錠が外れて扉が半開きになっている。中は薄暗く、ひゅーひゅーと風を吸い込んでいるようだった。 本能が”ここに入ってはいけない”と言っている。 何となく、ここから逃げ出したい気持ちになったがきっと土塊を残していった主もここに入ったことは間違いないと思い入ることにした。
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    裏口から続く痕跡を辿って後を追う。 どうやら2階に寄ったようで、小さな土塊がひとつの部屋に続いていた。 詰めが甘いなぁなんて思いながら続く痕跡を辿って部屋の前で察した。 この部屋は…… 軋む戸を押し開けると、中にはすやすやと寝ているしおせの姿が。 起こしては行けないと気配を殺して部屋を見渡す。 この土塊の主はしおせでは無いことは明白で、簡単に置かれた外套とランタンが机に置かれていた。 どうやら部屋を後にしたばかりのようで、外気の匂いがふわりと香っていた。 「おかえりしおせ。故郷は楽しかった?」 というのを我慢して部屋を後にした。
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    朝焼けに照らされながらごんさんとレタさんと、そして団長と、車に揺られ私たちのホーム《一座》に帰ってきた。 夜の仕事をこなした私たちに、団長は労いの言葉をくれた。今日1日はゆっくり休めと、仕事をした全員に休暇を与えられたけれど、最高のステージにするためには鍛錬が必要。 命の駆け引きをしてきて感じた、日々の練習が”仕事”のパフォーマンスを良くすると。 そしてもうひとつ、あの時ナイフを使って断罪した時にこの仕事を目撃された気がする。 でもその人影に覚えがあるような気がして見逃したのだけれど、たとえ仲間でも他言無用な掟を破ったと知れたら無事ではいられないだろう。 そうなる前に、口止めか仲介に入らなくては。 その人が残した痕跡を団長にバレないよう丁寧に消して行くことにしよう。 どうやら裏手から宿舎に帰ってきたようで、隙をついて話し合いをしたい。 団長もしおせを寝室に運ぶのに忙しそうだから、今のうちに追いかけよう。 すぐに行動に移す癖が後に仇になるなんてこの時は思っていなかった。 誰も見ていないと思っていたのが間違いだった、完璧主義のあの人が団長の傍らにいるということを忘れていたなんて。
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    「おはよう、しおせ。今日はいい天気だね……」 そんなわけもないことを言っては物悲しくなる。 今日の天気はいつもの曇り、返事も返って来ない。 「本当に……」 この感情はなんだろうか。 この子はただの”仲間”であるというのに。 …そういえば先日、団長殿から任を受けた。 これはとても名誉な仕事だとそう伺った。 夜の仕事を共にしたからわかる、あの方は裏切り者を絶対に許さない。仲間を売るようなやつは私がこの手で片付けよう。あの子たちに害が加わることのないように、みんなで幸せになるんだ。 …みんなってなんだ、あの子たちってなんだ? ……あやの? ……しおせ? ……Lia? ……まほろ、さん?
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    しばらくして、まほろさんの姿を見なくなった。 なんだか少し寒い気がして心地が悪い。 私の心情を察するかのように、最近の空模様は曇りが多くどんよりとしていた。 「しおせ……」 支配人から秘密裏に世話役を引き受けた時には驚いたものだ。 この子は長期に休むとして、てっきり実家に帰っているものかと思ったけれどよく良く考えればそれはありえない話だった。 なんせここは”帰る場所のない者たち”ばかりが集うサーカス団なのだから。 他の皆は以前の私と同じように、故郷へ帰っていると思い込んでいる。 そんな彼女が今傍らにいるのだから、少し嬉しいような。 目を覚まさないことを除いて。
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    あとを着けた私は、あやのを含む黒ずくめの一行の様子を全て目撃した。 陽向のような暖かいあの子がなんの躊躇もなく自分と同じ人間に手をかけていたこと、あまりの惨さに私は直視出来ず、震える腕を擦りながら物音を立てまいと、どこにもやりようのない複雑な感情を押し殺してただただ、死にゆく人々の命乞いと悲鳴を、声を押し殺して聞いているしか無かった。 傍らではケタケタと笑う2人。 距離もあり反響して何を言っているのか聞き取れなかったけれど、この狂気じみた状況で正気を保つには、己が信じる神へ祈る他なかった。 目的がなんであれ、これは大罪だ。 こんなこと、人道的に許してはいけない。 何故彼女は手を染めてしまったのか、団長に強要されたのか、道を踏み外してしまう前に私が救いたい。 ところで、なぜ私はここまであやのに対して肩入れしているのか何故かふと思い出せずにいた。 同じ団員だから? 同じグループに所属していたから? 私にとってのあの子は何。
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    ものすごい速さで2階の寝室から続く階段を駆け下りる。寝ている皆に聞こえているだろう、足音なんて気にしてられない。 早く、早く声をかけてあげなければ、また私は後悔する。 息があがる中やっと着いた玄関の外には、丁度車が走り去ったあとで、人の足では追いつけないと直ぐに悟った私は外套を羽織り、借馬屋を見つけることに徹した。 半ば窃盗に近い形で馬屋に停まっている一頭をかっさらう。 物音に飛び起きた守番の男が声をかけた。 「お客さん!お代を頂かないと困ります!!」 金を出す時間も惜しかったので懐にいれていた小金袋を押し付けて馬を走らせた。 この足なら何とか。 間に合うのかもしれない。
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    ある夜、いつものようにしおせの着替えを手伝っていると、ぴくりと指先が動いたような気がした。 その時は驚きと嬉しさが込み上げてきたが、もしかしたら見間違いだろうと、そう思い込むようにして世話を続けた。 ふと、窓の外に人影がいるような気がしてカーテンから除くと、黒服を着た4人が車に乗り込むのを見かける。 暗くてよく見えなかったが、羊の角が悪目立ちするその独特のシルエットから団長だとすぐわかった。 きっと早朝に向けて仕入れか視察か……?と思ったのだけれど。 あとの2人はよく分からなかったが、最後の一人が月明かりに照らされた瞬間変な動悸がした。 顔はよく見えなかった。 それでも右耳のピアスが光ったお陰でわかってしまう。そうであって欲しくない、何となくその車に乗り込んだら”この子”のように帰ってこないかもしれないと、そう思ってしまった。 「あやの……」 部屋のランタンを消し、寝静まる宿舎の中を急いで玄関まで走り抜けた。 時刻は深夜23時59分。
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    あれから幾日たっただろう、しおせが目を覚まさない。 明け方副団長が運転してた車から同期の七希さんとパフォーマーのるあちゃん、そして団長に抱えられて降りてきたあの子。 その時の光景は、朝焼けのせいだろうけれど息を呑むような儚さを体現した清らかさがあったのを覚えている。 ものすごく丁重に、そして優しく、凛々しく抱き抱えていた団長の姿も相まってだろう。 しばらくは、疲れて寝ているものと思っていた。 しかしいくら待てど待てど、起きることはなかった。 🤡の公演も、咲夜さんとるあちゃんのツーオペでやることも多くなり、とうとう千秋楽を迎えてしまいそう。 皆には長期休暇を得ていると知らせているようだけれど、私は、私だけは毎日彼女の眠る部屋に通い食事と水を給仕していた。 このことは他の家族や団員には内密にと支配人に口止めをされている。 「まったく、世話のかかる子ね」 恐ろしく綺麗な寝顔を見つめながら、頬を撫で、体を拭き、髪をブラッシングし着替えをさせ、水を飲ませる。 食事には全く手をつけておらず、枕元の水瓶も私が与えている量以外に減っている様子は無く。 「一体何があったっていうのよ。」 あの時の光景を綺麗だと思った自分が憎たらしくてやりきれなかった。
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    団長の書斎 「本日のご予定ですが____」 紅茶を片手に優雅にモーニングを頂く団長。傍らにはスタッフの柘榴、向かいのテーブルには支配人が新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる。 「フフンフーン~♪」 ポトン、ポトン……ポトン。 「…あまり糖分のとりすぎは良くないと思うのですが。経費的にも」 「ン~、ボクのモーニングルーティーンは紅茶に角砂糖3つ、そしてミルクさ?これは珈琲でも一緒なんだが、今更かい?」 呆れた溜息を吐き、 「回答になってないですよ、全く。アナタって人は」 「HAHAHA!! そうカリカリせず、キミもたまにはブラックではなく…」 「あんなゲロ甘、いえ、甘すぎるのは得意では無いので」 これもいつもの朝の風景。 他愛の無い会話にお付の柘榴が内心あくせくしているであろうに。 「__如何致しましょう?」 「あァ、そうだねェ。彼を今夜の食事に誘ってくれたまえ。」
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    やァやァ、待っていたよ。 まア、二言は言わずとりあえずそこに座りたまえよ。 食事が冷めてしまうよ、話はそれからにしようカ?
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    忘れたとは言わせない、この赤い色を
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    団長の書斎にて。 コツコツコツと杖を打つ音が聞こえてくる。 無機質な表情でその者は杖を打ち続けていた。 「おやおや、また失敗したんです?」 そこには義足の女性が1人。 「その顔、また失敗してしまったんですか?最近不漁ですね…」 お気の毒様と言わんばかりに挑発をしている。 浮かない顔をしていたその紳士は踵を返すと同時に電灯が灯ったような速度でパァっと明るい顔に戻った。 「まア!こういう日もあるサ!死んでしまった彼らには申し訳ないけレどね!」 「それは本当に申し訳ないと思っていないでしょうに。まあ謝ってももう無理ですが。」 「たまたま運が悪かっただけダよ!彼らは、いや、逆に運が良かったのカモしれないがネ…HAHAHA!!」 そう言いながらも窓際に立ち、顎に手を添え考える姿勢をとる紳士の紫色の瞳の奥で微かに黄色が揺らめいていた。
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    その後のことはよく覚えていない。 あの後絶命したターゲットに憐みの目で一凛の赤い薔薇の華を手向ける団長の後ろ姿と、駆け付けた□□さんと■■さんの声が聞こえた。それはどこか楽しそうな笑い声だったような気がするけれど、 「大事なものは失くしたくないよな」 と優しく介抱してくれた■■さんの声も聞こえたような気がした。 頭の中の靄が邪魔して見えなかった大切な5人の人たち、結局思い出せず気を失ってしまった。 気が付くと車の中にいた私の手の中にはナイフではなく、舞台で使うボールが在っただけだった。
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    「御喋りはホドホドにねぇ…!」 「ああああ!!」 団長の突然の登場に驚く。 痛みでもだえる標的は声にならない声でもがき苦しんでいた。 どうやら団長の杖が太ももに刺さっているようで、じわっと赤黒い血がゆっくり流れだしている。 「うがあ……ッ」 「いい子は静かにしていなくてはネ」 そう言いながらあの人はぐりぐりと杖を押し刺していった。 「これはキミたちへの罰だ。これっぽっちじゃア足りないサ。この痛み程度で許されると思うナというコトさ!どうだ痛いだろウ??」 「なにを言っているのかさっぱりだ…ああああ」 ニタァ…と笑いながら杖をにじらせているその人の瞳は黄色く輝いて見えた。 「忘れたとは言わせないサ。」
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    「何故?!お前たちに何をしたというんだッ…?!」 「…。」 何をしたか、知らない…、知らない? 何をためらっているの、 この手の中に凶器があるのに、手の中。 そういえば、 このナイフを何故私は持ってきたのか、 銃を支給されたはずなのに何故。 ナイフ…何?このナイフ、どこかで。 初めて触ったのに使い方を知っている、 このナイフは…。 「あ、あの珍妙な格好をした可笑しな男に騙されている!君は…なぜこのようなことをするのか、わかっているのか…!!教えてくれ!」 そうかもしれない。 だけれど。 「 お前は…お前たちは良いように使われている…ッ」 おぼろげに思い出すかつての仲間の影。 私はずっとジャグラーではなかった…のか?
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    仕事は手早くスマートに。 これは所属しているグループの教訓でもある、初心を忘れず手際よく始末しなくては。 目の前まで追い詰めた今日の標的。 今日集められた□□さんと■■さんは今頃他のターゲットや経路の確保に手をまわしているのだろう。遠くのほうで叫び声が聞こえるが、その声は二人のものではないと謎の自信をもって目の前のことに集中する。 (大丈夫、落ち着いてやれば。) 人の命を終わらすことなんて造作もない。いつものパフォーマンスだって一歩間違えればそうなることだって…だから何ら特別なことじゃない。そう思っていた。 おもむろに手に取ったナイフ。逆手に持ち替えもう一方の片手の手で標的の喉元を抑え込む。 「…ッ。うぐ」 嗚咽する喉に狙いを定めた。 …!? カタカタと金属音が鳴る。 なんだこの音は、と思って音のほうに目を動かす。 鳴っているのは私の手…?何故? ナイフを持つ自分の手が震えているのが視線に入る。 「な、なぜ私なんだね…!!」 「…そ、それは。」 獲物の問いに問いに答えてしまった。
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    そこにはもう既に人がいて。 「よぉ!…□□□ちゃんもお呼ばれされてたのか!?」 やはりそうだろうとは思っていたけれど、私だけに任せてくださっていたらと心のどこかで思っていた。 「おぉん?どっか腹の調子でも悪いのか??暗い顔しちゃって」 「いえ…そんなことは、、、。選ばれて嬉しくって。」 「ほぉーん…にしては、そうは見えねぇけどなァ」 いらぬ不信感と疑いを与えてしまった。特別な仕事前に余計な事を考えてしまった。こんなところ、あの人に見られたら…。 「なァに、らしくないなァ?ね、だーんちょ。」 「嗚呼、そうだねェ?」 「あーんまり、女の子に言い寄ってると嫁ちゃんだか何だかが怒っちゃうぜ~?□□氏~~」 そこに現れたのは■■さんとあの人。 すかさず突っ込まれていく□□さんは本当にわかっていないのか終始きょとん顔だったのを覚えている。 うまくなだめてくれた後、■■さんは一時振り向き様になにか言いたげな目をしていた。
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    「この件は、内密に…。 キミたちは特別に選ばれたのダから!ネ?」 突然のことだった。 自室の机の引き出しの中に封蝋をされたこの黒い手紙を届けられたのは。 最初は同室のしおせが間違えて入れたものだと思ったけれど、シーリングの刻印がこのサーカス団の旗印と同じであることに気づいた私は、 「…?」 と、眠気眼を擦りながらきょとんとした顔で何かを言いたげにこちらを見てくるしおせに向かって"なんでもない"という素ぶりの笑顔を見せる。 そんな手紙を誰にも見られまいとこの手紙に対する思いとともに胸中に仕舞いこんだ私は導かれるままにあの人の部屋へと足を運ぶのだった。 時刻は深夜午前0時_________
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    … からりと晴れた空、広大な砂丘、まる5日かけてようやく目的地に近づいた雰囲気のある大地に降り立ったけれど、どういうわけか団長がこの砂漠超えに使ったらしいロバは何処にもおらず、私たちは馬鹿げたことに徒歩で砂漠を渡るしか無くなった。 「はぁ…はぁ。団長…?このままでは体力的にもち、ませ…ん。水をください…」 「あっつー…。これじゃあアレだな!ミイラ取りがナントカ?ってヤツだな!!」 「レタさん…ミイラ取りが、ミイラになる…です。そして勝手にJuNさんを殺さないでもらって…」 それにしてもそうなってしまいそうなのは時間の問題かもしれない。今までの公演や演目練習もなかなか大変だったけれど、サーカス生活でこんな過酷なのは後にも先にも今のこの瞬間だわ…? 砂に囚われおぼつかない足取りで一歩、そして一歩と進む私たちはこの砂漠のどこかにいるであろうJuNさんと合流すべく大変にゆっくり進んだ。というかこの状況、ゆっくりしか進めないのだけれど…。 相変わらず顔色ひとつ変えず涼しい顔をして歩く団長、汗だくだけれどポジティブさがいつにも増してキレキレのレタさん…そして今にも倒れそうなフラフラの私。 そんな中、オアシスでも見つけたのか 先頭を歩く団長が突然止まる。 「おや?誰か向こうにいるネぇ」
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    🧞‍♂️熱砂の国の旅芸人🧞‍♀️〖アブゥ・ラ・カタブーラ〗編 ☞第三章:異国のその人へ 「と、いうわけダがね?キミ達は一足お先にボクらと視察さァ!わかったネ?」 そういうと目を丸くして、そして期待に溢れた輝きを持って返す√LETAと𝑵𝒂𝒈𝒊𝒋𝒚𝒐。 「つまり俺たちに大役が回って来たってワケか!!ッシャアアア!!!」 「ぜひご尽力させて頂きます!団長!…ところで、行き先は…?」 「それはモチロン!…熱砂の国サ!!!」 「ね、熱砂?!…それはあまりにも遠出ですね、大丈夫かしら、、」 「うおおおおお国を!超えるンすか?!!楽しみだなこりゃ!!!」 「静けさ広がる広大な砂漠を超えてゆく、ロマンチックな月夜…照りつける日差しに負けぬ情熱があれば苦ではないサ!HAHAHA!!」 そんな御託を並べて陽気な団長の背後で遠くのほうから副団長のかえでちゃんの声が聞こえる。 「_んちょー!だんちょーさーん!!!この大量のお届け物どうしたんです?どこですか団長さーん!!!」 「おっとそろそろ時間ダ!行くとしようHAHAHA!!」 聞かなかったことにしたいのか副団長に見つかる前にそそくさと荷物をまとめ私たちは遠い異国のちへと旅立ちました。
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    _____ 「…ちゃん、しおちゃん!起きてー!!!」 ゆさゆさと揺さぶられ目を覚ました。 「着きましたよ。」 すごく疲れている、あれ、なんかほっぺが。 「おやおや、悲しい夢でも見ていたのカイ?」 どんな夢を見ていたんだっけ。 手にはダガーナイフが握られていた。 _____